内容説明
失踪した父と同時に消えた自転車の行方を追う「ぼく」。台湾から戦時下の東南アジアへ、時空を超えて展開する壮大なスケールの物語。
※この電子書籍は2018年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sam
52
台湾人作家の小説は初めて。「父親の失踪とともに失われてしまった自転車の探訪」というシンプルな粗筋なのだが、奥行きや拡がりも感じられる不思議な魅力を持つ作品であった。自転車という「もの」に拘りつつ、想像力を拡げながら物語を紡いでいくところは村上春樹にも通じるものを感じた。帯の言(「緻密なディテールと、奔放なイマジネーションで描かれた、アジア文学の最前線」)が実に的確(自力で纏められず恥ずかしい限りですが)。台湾を巡る歴史をもう少し知っておけばより深く理解できたのかもしれない。著者の他の作品も読んでみよう。2021/09/19
Shun
34
台湾作家・呉明益による長編小説で、邦訳は「歩道橋の魔術師」に次いで2冊目となるそうだ。また2作ともに過去の記憶に現れる中華商場の場面など繋がりを感じられる部分があり、ここに拘りか作家が大切にしている記憶とも受け取れます。この商場にかつて暮らしていた”ぼく”は、長い時を経て戻ってきた自転車によって昔を思い出す。そしてこの自転車と共に昔失踪した父の思い出が蘇り、また自転車を巡って関わった人たちの記憶の旅を辿ってゆく長い歴史が広がっていきます。この感覚、なんとなく村上春樹を連想する作風で好みの作家になりました。2021/12/13
ゆう
28
語られることのない記憶、記録されないままの記憶。人が死んでしまうと、それらの記憶は存在しなかったも同然となるのだろうか?本書を読むと、そうではないと信じたくなる。モノが辿った時間が自分の一部となり、同時に自分もそのモノの時間の一部になる。我々は、そのように自と他の境界が曖昧な関係性の中で生きている。この物語は、まさにそのような記憶を丹念に織り上げたものだ。人生や歴史の過酷さの中に潜む美しさが強く印象に残る。"ゾウの脚に座っていたというわけさ...だから、おんしはこのゾウがいたところへ連れていかれるだろう"2024/10/31
そふぃあ
25
人間が起こす戦争によって、動物園の生き物たちが人間の都合で殺される。とても悲しくなった。やりきれない。ウクライナとロシアの戦争で犠牲になる動物たちのことを想わずにはいられなかった。2023/08/30
hukkey (ゆっけ)
25
失踪した父親と共に消えた自転車が20年越しに見つかり、どうやってここまで辿り着いたのか、それを探るうちに出会う人々の自転車との物語に触れながら、家族内の痼りを晴らしていく、台湾人作家が描く翻訳小説。かつて中華商場は下町のような雰囲気を想像し、太平洋戦争は壮絶なマレー作戦で血に塗れる自転車と死者が思い浮かぶ。ビルマの森で息絶えたゾウはどれほどの苦痛だっただろう。文章が丁寧で読みやすく、合間には自転車にかける手間と愛着も感じさせてくれる。ただ軽い話かと思って気付いたら、目の前に壮大な世界が広がっていた新感覚。2021/12/18
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