内容説明
株で大損、妻を担保にアメリカへ……それでも、この男はすごかった! 奇想天外なアイデアと並外れた行動力、そして内助の功と多彩な仲間たち――“別府観光の父”と呼ばれた男の、感動の生涯を描く力作長編。明治維新の五年前、伊予国(愛媛県)宇和島に生まれた油屋熊八は、大阪で経済記者をするかたわら株で大儲けし、一時は「油屋将軍」と呼ばれるほどだった。だが日清日露の戦争後に読みを誤り、財産を失う。妻のユキの助けもあり、熊八は再起を懸けてアメリカへ行くも、思うような成果は得られなかった。しかし四十八歳の時、大分県別府で宿屋を始めたときから、熊八の第二の人生がスタートする。これまで日本になかったような温泉観光地を――地元の反対、資金不足など、様々な困難に遭うも、「万事オーライ」の精神で乗り越え、仲間や妻とともに別府を日本一へと導くまでの奮闘を描いた感動の長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
146
宇和島生まれの油屋熊八。株で大もうけ、“油屋将軍”という異名を一時は持つも、読みを誤り財産を失う。アメリカに勉強しに行っても成果なし。また株に手を出して失敗と、めちゃくちゃの破天荒。そんな熊八の第二の人生は別府。「旅人を懇ろにせよ」(旅人をもてなすことを忘れてはいけない)の精神で、熊八の湯水のように湧く奇想天外なアイデアと行動力を、別府で出会った頼もしい多彩な仲間、内助の功で妻のユキが熊八を支え、別府観光の礎を築きあげる奮闘ぶりが熱かった。最後は涙腺が緩み涙が流れた。別府温泉に連泊で旅行に行きたくなるね。2025/02/15
岡部敬史/おかべたかし
98
素晴らしく面白かった。明治から大正にかけての日本の観光業を調べるなかで知った別府温泉を日本有数の温泉地にした油屋熊八というすごい名前の人物の立志伝。特別な不幸やドラマがあるわけじゃないけど、周りの人物の温かさや、創意工夫があり実に楽しく読了。別府温泉と熊八さんが作った亀の井旅館(今はホテル)にぜひ行きたい。行きたいところができる本って素晴らしいですね。おすすめです。著者・植松さんの本もいろいろ読んでいこう2023/10/27
trazom
92
別府観光の父と呼ばれた油屋熊八の物語。大阪で相場に失敗し全財産を喪失した後、渡米。帰国後、47歳で別府に移り旅館を始める。アメリカで覚えた「オーライ」「ドンマイ」の英語や、聖書の「旅人をねんごろにせよ」という言葉を心に刻み、様々なアイデアを繰り出し、私財を投げうって精力的に活躍する熊八の姿が生き生きと描かれる。熊八の情熱と行動力に心を打たれ、彼を支える妻ユキの善良さにホロっとなる。現実は、余所者に対する無理解や中傷で苦労も一入だったに違いないが、この小説は、熊八の明るさに光を当てた楽しい活劇になっている。2021/10/26
ゆみねこ
88
別府を日本一の温泉地にした油屋熊八。奇想天外なアイディアと並外れた行動力、そして妻・ユキの内助の功と多彩な仲間たち。株で巨万の富を得て後に大損そして妻を残し渡米、その経験はやがて大きく花開く。いつか別府に行ってみたい。面白かったです。2021/10/28
むつこ
37
初めてを作った人の話は勇気が湧いてきて元気にしてくれる。昨年まで放送されていたNHK大河ドラマの渋沢栄一の同じ時代、別府温泉を全国的に有名にした「油屋熊八」を主人公にした新聞小説。これ、日曜日のTBS夜9時のドラマに合いそう。岩手の花巻温泉も出てきておかしかった、いつか別府温泉、行きたいな。2022/01/31
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