内容説明
フランス北東部の街、シャルルヴィルに生まれたアルチュール・ランボー。早くから詩の才能を発揮し、詩人のヴェルレーヌとも交流を持ったが、20歳のとき、ランボーは突然、詩作を放棄する。なぜ、ランボーは詩を棄てたのか? 著者、奥本大三郎による詩の新訳とともに紡ぐ、ランボー伝!
目次
●第一部 詩人ランボーの足跡
第一章 日本におけるランボー
第二章 年金生活者を目指す神童
第三章 出奔
第四章 見者の修行へ
第五章 「忘我の船」で大海に出る
第六章 パリのランボー、ヴェルレーヌからの招待状
●第二部 「地獄の一季節」「イリュミナシオン」読解
第一章 「言葉の錬金術」の謎解き
第二章 “暗殺者”ランボー
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
101
私はランボーの凄さが全く分からない。…というより、小林秀雄さんの「ランボオ」でこの詩人を知っているにすぎない。本書は、ランボーの生涯や作品論を、パリ・コミューンの時代背景とともに要領よく描いているが、ヴェルレーヌとの関係や麻薬の問題が表題とどう関わるのか、もう少し踏み込めた気もする。やはり私は、詩人としての規格外の才能を評価する以前に、ランボーの尊大で自己中心的な生き方に強い嫌悪感を覚える。太宰治、石川啄木、野口英世……高い業績に比して、その人間性に大いに疑問を感じる人たちと、ダブって見えてしまう。2021/12/23
パトラッシュ
96
天才が己を天才であると確信しているのに世には受け入れられず、怒りに満ちた破滅的な生涯を送ってしまう。それがいつの時代にも天才たる者の運命だったが、文学でその道を突っ走った典型がランボーだ。多少頭がいいだけのフランスの田舎の少年が秘めていた異常な詩才は、自分は天才なのだからと普通の人生を拒ませるのに十分だった。平凡さを嫌悪して放蕩無頼の生活を送りながら書いた詩作を無視され、苛立ちをぶつけた果てに文壇を追われ詩を棄てるまでの半生を簡潔にまとめている。先駆者は常に捨て石であり、早すぎた革命家は必ず失敗するのだ。2021/10/09
まこみや
30
ご多分にもれず小生も小林秀雄のランボオに魅せられて仏文に進学した口である。何かの折に教授にその旨をお伝えすると、「小林秀雄…、あれはいけません」と苦い顔で言下に否定された。今にして思えば、卒論にフランスの詩人(ランボーではないけれど)を選んだのは自らの能力に無知な、まったく無謀な行為であったなあと思う。若気の過ちというか、むしろ若気の夢。当時『スタンダード仏和辞典』と若干の翻訳書を手がかりにランボーを恰も暗号解読のように読んでいた。皆目わからなかった。50年にして、今ようやく解読の端緒を教わったと思う。2021/07/18
Tenouji
30
ランボーには興味があり、甲本氏も帯でコメントしてるので、読んでみた。ランボーというと、その放蕩ぶりが有名だが、今、あらためて知ると、近代化・都市化に急速に人々の生活が変化していく中で、その茶番劇と格闘しながら駆け足で生きた印象が強い。要は、我々現代人の悩みとイラ立ちを、感性豊かなランボー自身が先鋒として経験している感じなんだよな。2021/07/02
冬佳彰
17
うーん、結局、「ランボーはなぜ詩を棄てたのか」は、分からなかった。俺みたいな年齢になっちゃうと、エゴが無茶苦茶に肥大化した(ちょっと頭の良い)子供の空回りに思えちゃうんだよな。「ライ麦畑」系に寄り添えないように。そこが天才を理解できない残念な大人の性なのかもしれないが。本書は、詩作をやめるランボーまでを語っているんだが、俺はなんとなく、詩作というデコレーションをやめた後のランボーの、短い人生(だけ)を知りたいと思った。案外、鍵はそこに埋もれている気がするんだが、違うか?2021/10/24