新潮文庫<br> エリザベスの友達(新潮文庫)

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新潮文庫
エリザベスの友達(新潮文庫)

  • 著者名:村田喜代子【著】
  • 価格 ¥605(本体¥550)
  • 新潮社(2021/08発売)
  • 秋の夜長に本を!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~10/14)
  • ポイント 150pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101203522

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内容説明

戦後、命からがら娘と日本に引き揚げた初音さんは今年九七歳になる。もう今では長女の顔もわからない。病が魂を次々と剥いでゆくとき、現れたのは天津租界でのまばゆい記憶だ。ドレスに宝石、ミンクを纏い、ある日はイギリス租界の競馬場へ、またある日はフランス租界のパーマネントに出かけ、女性たちは自由だった――時空を行き来しながら人生の終焉を迎える人々を、あたたかく照らす物語。(解説・岸本佐知子)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ちょろこ

136
揺らす一冊。良かった。戦争、満洲、引き揚げ、認知症、人生の終焉を描いた物語は決して明るくはない世界。でも時折パッと華やぐ明るい色彩が飛び込んできて、心の底を優しく揺らす時間だった。天津租界、溥儀、婉容夫妻、束の間の自由を謳歌した思い出の扉が開かれる時はもちろん、その母を見つめる娘達、介護士の目線がまたせつなく心を揺らす。自分はまだこういう家族経験がないからかそう思えるだけか…時空を旅する初音さんが可愛く、愛しく思えた。認知症とはまるでゆりかごの中で、未来ではなく過去を再び掴む夢を見る時間のような気がする。2022/04/17

アン

112
認知症を患い介護ホームで暮らす初江さん97歳。彼女の心は時空を超えて過去に戻り、優雅な天津租界の日々へと…。入所者は戦争によって人生を翻弄された世代で、抱え続けている痛みは切ないほどですが、枕元へ愛馬が迎えにくるお話には安らぎを感じ、初江さんは友と自由を謳歌した日々の記憶が心を支えてくれているよう。「良い介護とは人生の終幕の、お年寄りのいい夢を守ってあげること」現実の介護は苦悩も多くあると思いますが、穏やかに温かく寄り添うことが出来たらと。「おやすみなさい」という言葉が優しく響く、希望の宿る物語です。 2021/10/11

ばう

81
★★★★ 村田喜代子さんはいつも私の知らなかった女性の歴史を教えてくれる。今回は老人ホームで暮らす、戦争を経験した認知症の人達の話。彼らにとって戦争は決して歴史の教科書の中の話ではない。今も戦争の記憶を引きずって暮らしている。一つの世界、時間の中の話のようでいて、その中で97歳の初音さん達ホームのお年寄りの頭の中では別の時間が流れている。夢と現実を行き来してやがて懐かしい者たちの元へ旅立っていく。「認知症は自由ですよ」という介護士の言葉が心に残る。本編 264ページ、薄い文庫本なのに中身の濃い一冊でした。2022/07/27

佐島楓

72
満州で自由を謳歌し、戦後の混乱のなか命からがら引き揚げてきた初音さんとその娘さんたちの物語。家族であっても理解の及ばない若い時分の世界に遊ぶ初音さん。世代によって、生きてきた時代が異なりすぎるのだということをまざまざと見せつけられる。亡くなった祖母にもっと早くいろいろなことを聞いておくんだったなあという思いがこみ上げた。亡くなってしまったら、その人が背負ってきた歴史や記憶はほとんどが失われてしまうのだから。2021/09/19

たま

68
『姉の島』『飛族』『エリザベスの友達』と発表年代を遡って村田さんの高齢者小説を読む。『エリザベス』の高齢者たちは認知症もある。「彼女たちの小さい体は枝に吊り下がった蓑虫に似ている。…初音さんは自分の形なりの小さい巣の中で、外の光をぼんやり感じながらうつらうつら過ごしている。」作者はするりと蓑虫の巣に入り、昔へと遡るその心の動き、記憶の中の満州や朝鮮での暮らし、戦争、内地への帰還の情景を自在に鮮やかに蘇らせる。人生の最後にたどり着く美しく懐かしい思い出。それが彼女たち一人一人のまたとない生を輝かせている。 2023/06/09

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