内容説明
鍼灸道を確立し、五代将軍綱吉の御殿医にまで登りつめた鍼聖・杉山検校。じつは、贋者だった!? 一度でも人を斬り殺したものは、血塗られた仇討の連鎖からは逃れられないのか。怨念の呪縛に囚われ、自らを偽り、仕込み杖を携え盲目を装い、因果の大渦から逃げ続けた恩讐の彼方に、その目が見たものは――。目眩くほど壮絶な八十五年の生涯を描く、一気読み必至の大作。『見返り検校』改題。(解説・細谷正充)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
40
自らを偽り、別人として生きる道。壮絶な人生を見たようでした。2023/03/01
Urmnaf
10
無足人・柘植定十郎は、同郷の山下小右衛門を守るため、小姓頭の川又浅右衛門を斬る。兄とは疎遠だった弟・甚四郎は、藩主から仇討を命じられるが返り討ちとなる。定十郎は逃亡のため、江ノ島で出会った杉山和一を殺してなり替わり、和一としての人生を歩み始める。甚四郎の息子の兵庫介は、又候仇討となるのを承知で定十郎を追うが、その後の定十郎と兵庫介の人生は思わぬ交わりとなってゆく。当初不器用で破門された杉山和一が江ノ島で修行の後、人が変わったかのように名医となり、鍼聖・杉山検校となった裏にこんなドラマがあったとは。2021/10/04
だい
6
「先生、我々は何故に斬り合っているのですか」「誰のせいなのですか。何のためなのですか。」今のタイミングで読むからか、余計に胸に突き刺さる。主人公は、鍼聖と称された鍼灸師杉山和一。設定が巧妙で最後まで驚かされる。また、数々の仇討ちが描かれるが、お互いを思う心情の描写が豊かで不思議と心が温まる。2022/03/08
かずぺん
3
登場人物すべての人の壮絶な人生です。心に残る内容でした。2021/10/27
YH
2
読み応えがあった。ちょっと歯車が狂っただけで、定十郎本人だけでなく、関わる人の運命全てが狂ってしまう。兵庫介は本人は納得して生涯を終えたかもしれないが、仇討ちに取り憑かれた不憫な人生だった。結局、全ての関係者で幸せなのは、仇のきっかけを作った小右衛門だけなのでは。2023/06/25