内容説明
台所からきこえてくる音に病床から耳を澄ますうち、料理人の佐吉は妻のたてる音が変わったことに気付く。日々の暮らしを充たす音を介して通じ合う夫婦の様を描く「台所のおと」のほか、「濃紺」「草履」「雪もち」「食欲」「祝辞」「呼ばれる」「おきみやげ」「ひとり暮し」「あとでの話」を収録。鋭く繊細な感性が紡ぐ名作集。
なにげない日々の暮しに
耳を澄ませ、目を配り、
心を傾ける。
透徹した感性が紡ぐ珠玉の短編集。
女はそれぞれ
音をもっている
とかくあやふやに流しがちな薄曇りの感情に
端然とした言葉をあてがい、作中人物に息を吹き込む。
幸田文による人間観察の手つきについて考えていると、
江戸川乱歩とのある対話が脳裏に浮かんできた。
――平松洋子(解説より)
新装版に寄せて、青木奈緒によるエッセイも収録
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ykmmr (^_^)
121
『台所のおと』なんて、粋な表題から来るわけだが、女の『世界』や『苦労』、『在り方』を描いた短編集。有名文豪の娘である彼女であるが、やはり厳格文豪である父の『文才』は受け継ぎ、文章表現が技巧的ではあるが、その強さと共に、女性らしさも見受けられる。今以上に、女の立場が弱かった時代。文章的にも難しいところもあったので、全ての理解は難しかったが、オンナって、何で苦労が多いのか?オトコの足に踏まれないといけないのか?と思う事ばかり。「オトコを立てる。」美学も、納得出来ない時もあるしね。2022/11/14
涼
59
http://naym1.cocolog-nifty.com/tetsuya/2024/04/post-433320.html 昭和初期の話かと勝手に思っていたのですが、実際には戦後すぐくらいの話が多かったです。2024/04/26
さおり
40
2023年11月勝手に課題図書。を、今さら。大幅に遅れましたが、無事に読了いたしました。帯には、「なにげない日々の暮しに耳を澄ませ、目を配り、心を傾ける。透徹した感性が紡ぐ珠玉の短編集」と、あります。うん、それだ。なんかねー、ことばがすごく良かったのよ。良かったんだけど、手帳に書いておこうとか憶えておこうとか、そういう感じでもないって言うか。読んで良かったのは確か。特に気に入ったお話は「祝辞」とか「呼ばれる」とか。あ、いちばん心に残ったのは「雪もち」の主人公の名前ね。埴子!ネーミングセンス!2023/12/19
羽
23
幸田文の文章は、美しく洗練されている。古めかしさはなく、粋だ。一つひとつの短編は短いが、かるく読めるような話ではないので、一心不乱に読んだ。死に近づく者の姿を間近に見る人間の、切実な感情が生々しかった。看病する側の人間は、だんだんと心をすり減らしてゆく。けれどもそういう時こそ芯の強さ、踏ん張って立とうとするたくましさがひかる。 初めて知る日本語も多かった。印象に残ったのは「胸がはららぐ」という表現。古い作品にこそあたらしい言葉を発見することができる。いくつになってもあたらしい言葉を知るのは楽しい。 2021/11/21
たぬ
17
☆4 10編収録。この豊かな観察眼と言語感覚ね。台所仕事の物音なんて、包丁で刻む音がリズミカルでいいなあとか何か揚げ物を作ってるな?とかその程度しか気にしたことなかった。話しかけるとそれまでの動きをピタッと止めて無言でこっちを凝視してくる幼児だとか、メスを入れるのが怖くて手術を延ばし延ばしにしてしまう心理だとか、そういうのは半世紀以上前も現代も変わらないね。6年ぶりに読んだけど幸田文の文体ってやっぱ好きだわ。2025/11/21
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