講談社選書メチエ<br> 鷹将軍と鶴の味噌汁 江戸の鳥の美食学

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講談社選書メチエ
鷹将軍と鶴の味噌汁 江戸の鳥の美食学

  • 著者名:菅豊【著】
  • 価格 ¥1,925(本体¥1,750)
  • 講談社(2021/08発売)
  • ポイント 17pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065245873

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内容説明

おいしい野鳥が食べたい!――幕府の権力をもってしても、江戸のグルマンの食欲を抑え込むことはできなかった。失われた食文化の全体像を、初めて描き出す異色作!
江戸時代の人々は、多くの「野鳥」を多彩な調理法で食していた。鶴、白鳥、鴨、雁、雉子、雲雀、鷺、雀、鳩・・・それらは、食のみならず政治や経済、儀礼などをめぐって、魚やほかの動物たちには見られない、複雑で高度な文化の複合体を形作っていた。鳥は、日本文化そのものを理解するうえで欠かせない重要な動物だったのである。
歴代の徳川将軍は、鷹狩で野鳥を狩り、鶴を天皇に献上し、また大名や家臣に獲物を分け与えた。中・下級の武士たちは雁鍋や鴨鍋を楽しみ、裕福な町人は料亭で野鳥料理に舌鼓をうち、庶民は鴨南蛮や雀焼といった素朴なファストフードを頬ばった。幕府によって野鳥流通が厳しく統制され、日本橋の水鳥市場は活況を呈し、その大きな利権を狙ってアウトローたちがうごめいていた。しかし、江戸時代に隆盛を極めたこの食文化は、明治以降、衰退してしまう。そして今、数千年の歴史をもつ野鳥を食べる伝統文化が、日本から消滅しようとしている。
さまざまな野鳥料理のレシピ、江戸に鳥を送っていた村のフィールドワークなどから、語られざる食文化を総合的にとらえたガストロノミー(美食学)の誕生。

目次
序章 鳥の味にとりつかれた美食家たち
第一章 鳥料理の源流――京料理から江戸の料理へ
1 日本人はいつから鳥を食べていたのか?
2 中世の鳥料理
第二章 江戸時代の鳥料理と庖丁人――鶴の味噌汁、白鳥のゆで鳥、鷺の串焼き
1 江戸の町から出てきた大量の鳥の骨
2 『料理物語』のレシピ
3 庖丁人――一流シェフの伝統と技術
第三章 大衆化する江戸の鳥料理――富商、貧乏武士、町人の味覚
1 鶏鍋、雁鍋、鴨鍋――中級・下級武士の食卓
2 料亭・名店の味――富裕層、文人墨客の贅沢
3 鴨南蛮と雀焼――庶民の素朴なファストフード
第四章 闇の鳥商売と取り締まり――せめぎあう幕府と密売人
1 「生類憐れみの令」による危機
2 アウトローたちの鳥商売の手口
3 鳥商売と大岡裁き
第五章 侠客の鳥商人 ――東国屋伊兵衛の武勇伝
1 日本橋・水鳥市場の男伊達
2 幕臣と侠客との親密な関係
第六章 将軍様の贈り物――王権の威光を支える鳥たち
1 鷹狩と贈答による秩序維持
2 「美物」の使い回し――中世の主従関係
3 「饗応料理」の鳥の意味
第七章 江戸に鳥を送る村――ある野鳥供給地の盛衰
1 手賀沼の水鳥猟
2 西洋的狩猟の浸食
3 カモが米に負けた
終章 野鳥の味を忘れた日本人

目次

序章 鳥の味にとりつかれた美食家たち
第一章 鳥料理の源流――京料理から江戸の料理へ
1 日本人はいつから鳥を食べていたのか?
2 中世の鳥料理
第二章 江戸時代の鳥料理と庖丁人――鶴の味噌汁、白鳥のゆで鳥、鷺の串焼き
1 江戸の町から出てきた大量の鳥の骨
2 『料理物語』のレシピ
3 庖丁人――一流シェフの伝統と技術
第三章 大衆化する江戸の鳥料理――富商、貧乏武士、町人の味覚
1 鶏鍋、雁鍋、鴨鍋――中級・下級武士の食卓
2 料亭・名店の味――富裕層、文人墨客の贅沢
3 鴨南蛮と雀焼――庶民の素朴なファストフード
第四章 闇の鳥商売と取り締まり――せめぎあう幕府と密売人
1 「生類憐れみの令」による危機
2 アウトローたちの鳥商売の手口
3 鳥商売と大岡裁き
第五章 侠客の鳥商人 ――東国屋伊兵衛の武勇伝
1 日本橋・水鳥市場の男伊達
2 幕臣と侠客との親密な関係
第六章 将軍様の贈り物――王権の威光を支える鳥たち
1 鷹狩と贈答による秩序維持
2 「美物」の使い回し――中世の主従関係
3 「饗応料理」の鳥の意味
第七章 江戸に鳥を送る村――ある野鳥供給地の盛衰
1 手賀沼の水鳥猟
2 西洋的狩猟の浸食
3 カモが米に負けた
終章 野鳥の味を忘れた日本人
あとがき
鳥食の日本史略年表

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

サケ太

26
野鳥、と聞くとやはりバードウォッチしか思い浮かばない訳だけど、つい最近までは野鳥を食べる文化が存在していたという。縄文時代から始まり、室町時代、江戸時代と各時代で調理法が確立し、大衆に広がっていく。更に、鳥を食べるという事の身分的な意味合いは興味深い。鷹狩りという社会的行為、鷹場制度がもたらした野鳥流通システムの管理。それこそが、この国における野鳥保護の一助になっていたが、時代の変化が、倫理観の変化が野鳥を食す文化を衰退させていった。『多様な生き物の存在が脅かされていることの証しだともいえよう。』2021/10/13

ようはん

21
今の日本人は鳥の肉を食べるというとほぼニワトリたまに合鴨という所謂家禽がメインであると思うけど古代から江戸時代に至るまで鴨や雁といった猟で得た野鳥が鳥食の中心を担っていた事を本書で知る。食された野鳥もハクチョウやツルも含まれてかなり幅広く料理も多彩であるが、江戸時代に野鳥食文化のピークを迎えながら明治以降は過度な狩猟や環境破壊により野鳥の個体数が激減し野鳥の食文化が廃れたという結末になるのは切ない。2021/10/14

佐倉

18
鴨、雁、白鳥、雀、鶴や鴇。古代から近世にいたるまで我が国の食に大きな位置を占めていたという野鳥食。明治維新以後から現代にかけてほとんど忘れられているそれらのメニューだけでなく歴史や儀礼、流通と衰退の原因などについて多方面から取り上げている1冊。諸々興味深いが、やはり江戸時代、鷹狩のために管理されていた鷹場が生類憐みの令によって放棄され鳥商人たちによる乱獲無法地帯となり資源が激減、吉宗の時代に再び管理しようとしたところ闇商人のルートが広がりすぎて販売規制と闇ルートのいたちごっこに…となるところが面白かった。2025/08/28

bapaksejahtera

16
我が国食文化史に重要だった野鳥食について述べる。特に江戸時代に献上品や饗応料理として最上の獲物-美物とされた鶴、鷹狩とその餌の採集猟に関する既出が厚い。支配層の威信物としての鳥類食の歴史の他にも、江戸中期以降に至って拡大し、戦後まで続いた野鳥食の習慣について関東を中心とした趨勢が述べられ、冒頭の漱石や鴎外等明治期の文芸に頻繁に現れる雁鍋を始めとした料理店の消失の記述に繋がる。野鳥猟場手賀沼の近代史は本テーマを分析する素材として妥当と思う。終章の野鳥の味を忘れた日本人について筆者の主張はやや無理筋とは思うが2023/03/30

kenitirokikuti

9
図書館にて。後書きによると、著者の大学時代からの旧友、セーラームーンの担当編集者「おさBU」こと小佐野文雄が講談社に繋いでくれたのだという(本書の内容とは無関係)▲研究の発端は、手賀沼南岸、印旛沼寄りにある石碑(香取鳥見神社)だったそうな。私は北岸の利根川寄りにいるので、そっちはギリギリ未訪問であった。来週訪問しよ▲いま、鳥肉といえば99%養鶏場の鶏肉である。ところが、江戸時代半ばから明治時代まで、江戸には銚子の鮮魚と似たルートで鳥肉も流通してたのだ。鴨南蛮の蕎麦が、その名残り。2023/04/09

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