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内容説明
「人新世」(人類の経済活動が地球を破壊する時代)というウソがまことしやかに唱えられている。彼らは「脱成長」を唱え、「環境危機の時代を克服するには、資本主義による経済成長を諦めるべきだ」という。この一見、倫理的に思える脱成長論は、じつは社会主義・共産主義の復活を目論むレトリック、仮面である。経済成長を止めて全体のパイを減らし、弱者をよりいっそう貧しくさせる「罠」なのだ。資本主義よりも共産主義のほうが環境破壊を生むことは、かつてのソ連や現代の中国を見れば明らかだろう。また、気象関連災害による死者は経済成長とともに大幅に減少してきた。「人類はかつて自然と調和した素晴らしい生活を送っていたのに、資本主義と経済成長のせいで自然に復讐されている」という物語は、事実に反する。社会主義の大失敗と資本主義が人類を救ってきた歴史、自由な生活と経済成長がコロナ禍と貧困・格差、地球環境問題を解決できることを示した一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
126
斎藤幸平『人新世の「資本論」』への反論としては納得できる部分が多い。旧ソ連の社会主義経済失敗と中国の事実上の資本主義経済移行を見てきた立場からすれば、たとえ脱成長を冠しても全体主義を志向するコミュニズムの本質は変わらない。逼塞を余儀なくされていたマルクス主義者が、格差拡大や環境破壊という資本主義の失敗をテコに復権を図っているのだ。しかし資本主義側にはマルクスに匹敵する理論がなく、経済成長の現状維持が基本となるため変革への憧れを阻止できない。「もっと資本主義を!」と唱えるだけでは無意味なのも事実なのだから。2024/02/03
南北
55
もうじき「失われた30年」になろうとしている現在、岸田総理の「新しい資本主義」(実は古い社会主義)のような考えがさまざまなところで台頭し始めているようだ。本書は斎藤幸平の『人新世の「資本論」』を取り上げ、マルクス思想に共鳴する人々への批判を行っている。50歳以下の人たちは好景気を実感したことがないと思われるので、「人新世-」に共感するのも理解できなくはないが、いわゆる「脱成長論」では問題の解決策にならないことは明らかである。著者は経済学者として常識的なことを述べているのだ。2023/03/10
Sam
52
読むのを途中でやめたので「読んだ本に登録」してはいけないんだろうけど少しだけコメント。「人新世の資本論」を批判し資本主義こそ私たちが進むべき道と主張する本であるが、どうにも噛み合ってない。ものすごく大雑把にいうと、「人新世の資本論」が未来=「これからどうなるか・どうすべきか」を論じてる一方で、本書は過去=「いまに至るまで資本主義がいかにうまくいったか(いかにコミュニズムがうまくいかなかったか)」に依拠しており、それが噛み合わない理由ではないか(もしいつの日か最後まで読んで理解が間違ってたら修正します)。2021/08/23
速読おやじ
39
人新世の資本論への徹底的反論。脱成長はゼロサムの世界になると警告。結局は、誰かの得は誰かの損になる不幸な世界だと。一方で資本主義はプラスサムの世界だ。世の中は資本主義によって幸福になっていると。じゃあ環境問題は?貧富の差は?どうやって解決するんだ?と読者は思うのだが。環境問題については、外部不経済の問題だから例えば炭素税みたいな仕組みで解決に向かうのではないかという事と、経済成長に伴う技術で何とかなる。貧富の差についてはゼロサムでは解決にならないということか。さて、僕はどちらのポジションを取ろうか。。2022/01/17
アベシ
32
資本主義経済による成長により人類がこれまでに成し遂げてきたことを実証することにより、斎藤氏の著書「人新生の資本論」を批判的に検証している。確かにマルキストの人たちの主張には説得力がないように感じられる。しかし産業資本による富の独占は行き過ぎているように感じる。わずか数%の人が富の大部分を所有するというのは行き過ぎている。アメリカにはそのためにチャリティの考え方が根付いているとは言え資本主義も制度的に工夫が必要である。民主主義との折り合いをいかにつけるのか。人類の知恵がためされている。2023/05/29