内容説明
20万部超のベストセラー『下流老人』の著者、最新刊。コロナ禍を生き抜くための具体策と日本がめざすべき社会保障のあり方を提示する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
87
コロナ禍が経済的弱者を直撃した状況については、多くの本や雑誌で取り上げられてきた。本書も社会福祉士の立場から見た同様なルポかと思ったが、そうなのは最初の2章まで。第3章ではコロナで露呈した人の心の貧しさに焦点を当て、芸能人や政治家らが無意識に生活困窮者を蔑視している姿を描き出す。非正規就労者の大量発生や女性の性的搾取を容認する現状を厳しく非難し、弱者向け支援制度を紹介し必要な政策を提言するなど格差社会是正を訴えている。ただ、明確に野党の立場から現政権批判に終始しており、総選挙を控えた政治文書の匂いがする。2021/10/20
シャコタンブルー
62
コロナ感染者数はマスコミが盛んに取り上げるので危機感を持つことができる。その一方で「死にたいほどつらい」生活困窮者の悲痛な叫びをマスコミはスルーしている。日本の労働環境は非正規社員が4割を占めている異常な状態になっている。コロナ禍で真っ先に職を失っているのがこの人達だ。構造改革と称して非正規雇用を増やした竹中平蔵氏の失政がコロナの時代にも悪影響している。このような時代ではいつ誰が失職してもおかしくないし貧困に陥るのは自己責任ではない。命と暮らしを守る電話番号も掲載されいる。一本の電話で命が救われる。 2021/08/24
ミライ
39
コロナ禍における貧困について、ソーシャルワーカーの藤田孝典が語った一冊。コロナ前→コロナ禍に入ってからの失業率や生活保護数者数の増加などから、実際にコロナが原因で 失業された方のインタビューなど生生しい内容が多い。特に、非正規雇用と女性の労働環境についてくわしく解説されている(ナインティナインの岡村さんによる「風俗発言」についても深く検証される)。支援・相談窓口についても紹介されており、知らない保障制度なども多く勉強になった。2021/08/04
ぽてち
35
コロナ禍で仕事を失った人に密着したルポルタージュを想像していたが、だいぶ違う内容の本だった。1・2章こそ貧困や格差を取り上げているが、3章は深夜放送で暴言を吐いたタレントを槍玉にあげ、4章は困った時の相談窓口を多数紹介するなど、何が言いたいのかよくわからなかった。ぼくは、この国はおかしいとずっと前から思っているので、著者の主張には賛同する部分もあったが。2021/09/14
katoyann
20
生活困窮者の支援をしている著者がコロナ禍によって失業した人々の生活実態を描写した上で、格差拡大の要因を分析した本。コロナ禍では特に女性の失業が多かった。生活への不安から自死を遂げる女性が増えたという話から、女性の貧困が際立つ原因について考察している。非正規雇用労働者の多くがコロナ禍で失業しているということが問題である。派遣労働の規制緩和を筆頭例として、企業も自治体も人件費を削減して、利益を上げていくという新自由主義に舵を切ったがために、安定した雇用を得られない労働者が4割に達している。ルポとして秀逸。2025/02/12