ちくま新書<br> 関東大震災「虐殺否定」の真相 ──ハーバード大学教授の論拠を検証する

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ちくま新書
関東大震災「虐殺否定」の真相 ──ハーバード大学教授の論拠を検証する

  • 著者名:渡辺延志【著】
  • 価格 ¥825(本体¥750)
  • 筑摩書房(2021/08発売)
  • 夏休みの締めくくり!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~8/24)
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  • ISBN:9784480074195

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内容説明

「関東大震災における朝鮮人虐殺はなかった/少なかった」「正当な自衛行為だった」。学術的には顧みられることがなかったこのような「虐殺否定」論が論文となり、ケンブリッジ大学出版局刊行の書籍に収録される予定があった。執筆者はハーバード大学教授。論文を読み進めてみると、主張の根拠とされているのは当時の日本の新聞だった。震災直後の混乱のなかで紙面に躍ったフェイクニュースは、なぜ、どのように生まれたのか。長年新聞社に勤めた著者が、報道の責任を総括する。

目次

はじめに
第一章 ラムザイヤー教授の論文を読む
1 治安という正常財
論文の要旨
治安サービスを考える枠組み
関東大震災における民間の治安維持
新聞報道を論拠に
2 朝鮮人犯罪の検討
朝鮮人による犯罪規模の推定
報道から公的文書まで
虐殺された人数
扇情主義の新聞
推計をめぐる問題
「二人より多く一万人よりは少ない」
結論「四〇〇人より多く五一〇〇人より少ない」
3 戦後日本の警備産業
戦後の朝鮮人による暴動を強調
民間警備産業の発展
明白な力点
第二章 論拠の資料を確認する
1 犯罪はなかったとする資料
二〇〇八年中央防災会議の報告書
朝鮮人の犯罪だと認められたものはない
2 ラムザイヤー教授が論拠とする資料
朝鮮総督府の資料
弱い根拠
「放火は一件もなかった」
第三章 論拠の新聞記事を読む
1 「朝鮮人の暴徒」報道
早川東朝社員甲府特電
なぜ記事になったのか
軍の電文をそのまま報道
九月四日時点の報道
2 碓氷峠の爆弾テロ計画
九月四日名古屋新聞
鉄道が情報源に
(長野)の意味すること
鉄道周辺の環境
記事が生まれた背景
第四章 一〇月二〇日前後の新聞記事
1 朝鮮人にかかわる報道解禁
箇条書きで二三の犯罪
二段階の報道解禁
治安当局は流言と認識
本格化した自警団の摘発
2 市民の反応
憲法学者上杉慎吉の批判
社説に見える新聞の苦渋
黒龍会による「自衛」という主張
3 政府の圧力で生まれた虚報
一〇月二〇日の号外
外交問題に発展
朴烈事件の不思議な号外
九州日報の報道
関東自警同盟による自警団擁護
『誤報とその責任』
第五章 東京大学新聞研究所の研究
1 戦後の研究
改訂された論文
定量的な分析
群を抜いて多い河北新報
「朝鮮人が暴行」が四三・九%
2 引用された河北新報記事
避難民の体験談
「不穏記号」とされた目印
燃え立つ復讐心
山県有朋首相の邸宅
3 報道が増えた理由
そろっていた条件
第二師団の動き
高くなかった社会の関心
第六章 虐殺はなぜ起きたのか
1 虐殺の実像
軍や警察から奪って殺害
「あんな惨ごいのは始めてだ」
精神異常が原因なのか
流言の何に怖れたのか
各地で奪われた武器
2 帰還兵たちの経験
体験を封じ込める仕組み
震災一周年
「虐殺否定」論の正体
おわりに
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

68
ハーバード大のラムザイヤーという教授が発表した関東大震災時の朝鮮人等の虐殺に関する論文を批判的に検討する。極めて雑な論文であることが明らかにされている。しかし本書の価値はそこから踏み込んで、教授が根拠とした当時の新聞報道の本質に迫ろうとするところ。その際安直な陰謀論等は退け、当時の混乱した状況から人々の心理などに基づいて推定する。在郷軍人が中心の自警団のあり方、虐殺(事後政府も認定している)に対する事後における世間の関心の低さ、そして自分が当時記事を書いていたならとする著者の自戒など、一読に値すると思う。2022/01/02

Satoshi

14
一部の右翼系の識者に絶賛されたラムザイヤー教授による関東大震災の朝鮮人虐殺に関する論文について検証している。フェイクニュースに基づいて、朝鮮人に対する集団暴行が発生し、ラムザイヤー氏は新聞が発行したフェイクニュースをもとに論文を書いた。フェイクニュースは震災の混乱の中、人づてに広まって新聞記事にまでなった。この事件の正当化は難しいと思うのだが、、、、2022/09/03

jamko

12
ラムザイヤー教授、慰安婦のことだけじゃなく関東大震災の朝鮮人虐殺についてもおかしな論文出してたの知らなかった。その論文の根拠となった当時の日本の新聞記事を元記者である著者が詳細に検証する。自警団の中心であった在郷軍人=大陸や半島からの帰還兵の抑圧された戦争体験が、流言を容易に信じ込ませ虐殺につながっていったという推察はなるほどと思った。最前線に行かされた貧しい若者たちが戦争体験で心を病み、それが虐殺のトリガーとなってしまったとしたら。2021/08/09

二人娘の父

11
前著『歴史認識 日韓の溝』(ちくま新書)から、さらに関東大震災時の朝鮮人虐殺事件を深掘り。ラムザイヤー論文を参照しつつ、その虚構と論文が依拠した当時の新聞報道の詳細を探究。新たに学んだのは著者の資料へのアプローチ方法である。「あとがき」で書かれているが、新聞記者として著者は災害時における「新聞の興奮」を素直に吐露している点。大きな災害になればなるほど、それを報道する新聞社、今日的にはマスコミ全体が、ある種の熱狂状態におかれ、何かが狂ってしまうとそれがフェイクニュースの発信源になるという自戒は教訓的である。2021/09/14

紫草

9
関東大震災の時、朝鮮人が「放火をした」「井戸に毒を投げ入れた」などの流言を信じた人々がたくさんの朝鮮人を虐殺した。虐殺の中心となった自警団の中には朝鮮戦線からの帰還兵が少なからずいた事、また一般と市民の間にも「植民地にされた朝鮮人が日本に不平を抱いている、この期に仕返しされることもありうる」という意識があったであろうことが、流言を簡単に信じて虐殺に向かってしまったとの筆者の論に納得。それにしてもラムザイヤー教授という人は、なぜちゃんとした資料にあたらず不確かな資料から論文書いちゃうのか。学者のはずなのに。2021/10/16

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