ちくま新書<br> リンパのふしぎ ──未病の仕組みを解き明かす

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ちくま新書
リンパのふしぎ ──未病の仕組みを解き明かす

  • 著者名:大橋俊夫【著】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2021/08発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480074201

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内容説明

リンパとは、毛細血管と細胞のあいだに存在するすき間「内部環境」を満たす液体がリンパ管に流れ出したものです。リンパは、毛細血管や細静脈から漏れ出した水分やアルブミン、細胞で生み出された老廃物を運んだり、病気のもとのウイルスや細菌を撃退するなど重要な役割を担っています。本書では、免疫力と腸のリンパとの深い関係など最新の研究成果も含め、「未病」つまり病気を未然に防ぐためのからだの仕組みを医学的根拠に基づいて紹介していきたいと思います。

目次

はじめに
感染症とリンパ
リンパとは何か
本書の構成
Ⅰ リンパとは何か
第1章 リンパから見えてくるからだの仕組み
細胞の生と死
血液に溶けて栄養物と酸素が運ばれる
元気に生きているとはどういうことか
リンパ液とは何か――アルブミンの再循環
リンパは免疫にも深く関わっている
病気の始まりはリンパから
リンパ管の構造と働き
リンパ管は脂肪に守られている
リンパを流す力
腸のリンパの仕組み
腸のリンパ管は心臓に似ている
リンパと自律神経
からだの中の特殊なリンパ管
目や耳のリンパ
脳とリンパ――新しい学説
第2章 リンパ研究の歴史
古来の「言い伝え」が教えるからだの謎
ヒポクラテスとアリストテレス
近代以降にリンパ研究の礎が築かれた
リンパの働きについては未解明
日本におけるリンパ研究の現在
リンパ研究の最前線
リンパ管新生、リンパ節発生のしくみ
Ⅱ リンパが未病につながる
第3章 毎日の水分摂取から病気を予防する
江戸時代の文献『養生訓』の教え
未病←食事←水分補給…という問題意識から
アルブミンが水を連れてくる
水を飲むと腸のリンパに油が流れる
からだの中の油のはなし
食べたブドウ糖も腸のリンパを流れる
小腸の壁に抵抗力を高める自然免疫細胞が住んでいる
腸と皮膚は細菌やウイルスから毎日攻撃されている
ATPがリンパで果たす重要な役割
腸リンパの中にATPが流れるのを防ぐ
水を飲むと腸の壁からセロトニンが分泌される
脳の中のセロトニンは元気の源
セロトニンは未病のための重要物質
第4章 水を飲むことは生命の維持に直結する
義母の看取りから学んだ真実
水分補給が生死を分ける
大腸はからだの水を逃がさないための臓器
大腸のリンパ管
Ⅲ 尿意からリンパの流れを知る最新研究
第5章 むくみとリンパを考える
リンパ研究を始めるきっかけ
白訒病はなぜ起こったのか
むくみで皮膚が硬くなるのはなぜか
第6章 むくみを学び直そう
むくみの定義
組織間隙とは何か
スターリングの仮説とは
むくみの原因を漏れなく挙げてみよう
動脈の病気による浮腫
心臓の病気による浮腫
静脈の病気による浮腫
肝臓の病気による浮腫
腹水について
腎臓の病気による浮腫
蛋白漏出性胃腸症とは
ホルモンの病気による浮腫
月経前症候群と浮腫の関係
水中毒とはどのような病気か
リンパ浮腫について
皮膚感覚とは
リンパ浮腫に対する外科治療
原発性リンパ浮腫と遺伝
第7章 リンパの流れを評価するには
リンパの流れた量を知るには――旧来の方法の問題点
新しいリンパ流量の評価法
ヒトでの実験で確認する
腹式呼吸を加えると血液のバゾプレシン濃度は低下する
ウサギの実験で再確認する
リンパは夜流れる
レム睡眠とノンレム睡眠
睡眠と日内リズムの重要性
尿検査からリンパの流れを知る
リンパ浮腫療法士の実技試験への応用
Ⅳ リンパと癌治療法の最新研究
第8章 癌の正体
癌ってどんな病気?
細胞分裂の仕組み
風邪は万病の源
ウイルスと癌との関係
2・5人称の死
癌の早期発見が未病をつなぐ
第9章 リンパの流れと癌
血液とリンパの流れの相違点
流れ刺激が内皮細胞から一酸化窒素NOを分泌する
リンパ管内皮細胞からもNOが分泌する
リンパの流れがNO産生も高める
リンパ系におけるNOの働き
酸素はからだの毒にもなる
酸素が少ない小腸と大腸
リンパは酸素が少ない液体
低酸素環境は胎児の成長に好都合
低酸素環境は癌細胞の増殖にも好都合
リンパの流れが癌細胞周囲の酸性化に関与する
第10章 癌治療におけるセンチネルリンパ節の重要性
センチネルリンパ節とは何か
センチネルリンパ節の新しい定義
悪性乳癌細胞がATPを分泌する
ATPがヒトリンパ管内皮細胞と癌細胞との結合を促進する
癌転移が見られるセンチネルリンパ節で何が起こっているか
第11章 検診でセンチネルリンパ節を検出する
乳癌検診の触診・マンモグラフィー・超音波検査
一般的な癌検診
脂質1重層のソナゾイドを利用して乳癌の転移を発見する
第12章 新しい癌治療法を開発する
ICAM-1をターゲットにした癌治療法
内科学教室での研究漬けの日々
恩師・東健彦先生との思い出
医学部の知財センターと国際特許の取得
新しい癌治療法の可能性
ATPをターゲットにした癌治療法の開発
リポソームに変わるナノ物質、エクソームを使った癌治療法
活性酸素とNO封入した物質を使った癌治療法
第13章 リンパ学のこれからと未病を問いなおす
循環器病学、免疫学、腫瘍学とリンパ基礎医学を連結する
学問分野の垣根を越えた連携
英国の手法に学ぶ
「待つ」、「許す」、「諦念」という矜持
これからのリンパ学研究への期待
リンパ産生の仕組みを解明する
リンパ管の再生の仕組みを解明する
健康科学との連携
食品科学との連携
脂肪細胞との相互作用に注目する
腫瘍学、再生医学研究との連携
発生学研究との連携
医用工学研究との連携
おわりに
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みこ

19
コロナ禍において世間で免疫というのがキーワードになりつつあるのでそこに興味を惹かれて読んでみた。リンパについて詳しく分かりやすく解説した内容を期待していたのだが、現在進行中の研究についての話が多く「リンパのふしぎの不思議」といった内容だった。あとがきを読む分には著者は最初から自分の書きたいものを書ききって満足しているようだが、専門的で難解だった。2021/10/17

奈良 楓

14
【良かった】● NHK?でリンパ特集をしていたので興味を持ちました。 ● 2021年8月刊。現時点でもリンパはわかっていないことが多いらしいです。そもそも観察がしにくいらしいです。 ● 専門知識がないと難しい本ですが、水を飲むことが大切なこと、横になって睡眠をとりリンパを流すことが大切なことはなんとなくわかりました。 ●水を飲む大切さは10年前ジムトレーナから聞いていたので、リンパともつながるかもしれない。2024/02/25

K

3
毛細血管と細胞のあいだに存在する「内部環境」を満たす液体がリンパ管に流れ出したもの=リンパのメカニズム、働き、免疫機構を通じて日々の健康維持にどう活かすか、癌転移との関わりや癌治療への役立て方などをわかりやすく解説。水分摂取や十分な睡眠といった、日頃からよく言われることが生態の健全な維持に深く関わっているのだなと思わされました。「からだの働きは遊びがあっても無駄はない」2022/07/10

izumone

2
リンパ学の研究史,研究の最新トピックス,疾病や健康法,著者の個人的研究歴等々,内容が多岐にわたり,何を求めて本書を開く読者を想定して作られた本なのか迷うところ。2021/10/10

ハラペコ

1
リンパの基本事項から最新の研究まで、著者の趣味にやや寄っているのを加味しても充実した内容。実験や観察の方法まで併せて載っていて、ちょっとして推論の訓練にもなる。しかし、周辺知識や高校生物レベルの内容への言及がリンパに関する内容とごちゃ混ぜに挿し込まれているのと、膨大な箇条書きをまとめたせいか因果関係に関する助詞や接続詞があやしい箇所も散見されて非常に読みづらい。基礎知識は注釈やコラムで補完して、情報の取捨選択を吟味して欲しかった。内容への興味は十分にあるのに何となく中断した人も多そう。勿体ない本。2024/11/03

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