内容説明
「アサギをよぶ声」シリーズの後日譚。
アサギの孫であるヤヒコの物語。
十二歳になったヤヒコは、父から「この国にないものを探してこい」と一人旅を命じられる。ヤヒコの父、そして祖母であるアサギも十二歳になったとき旅に出ている。
ヤヒコは、旅の途中、ラオという漁師に出会う。船が難破し、漂着した彼は、自国に帰ろうとヤヒコの協力を得て再び船を出そうとする。ヤヒコはラオの国で作られている鉄製の斧にひかれて、ラオと航海をともにする。
一方、ユンという少女が住む国では、「夢の国」とよばれる開拓地への移住が、シュー様と呼ばれる皇族を中心に進められていた。弓を作る工人を父にもつユンだが、生活はきびしい。ユンの親友の家族が移住を決意したこともあり、気乗りのしない父を説得して、ユンも新開地へと旅立つ。しかし、そこには、集落の建物だけがのこされており、人の姿がまったくなかった。
とにかくそこで生活をするため、父と弓づくりにはげむユンだったが、ある日、砂浜に少年が横たわっているのを発見する。それは、ラオと二人、海に出たヤヒコだった。
ヤヒコを看病するユン、そして快復したヤヒコは、ユンの国に古くから伝わる「グウェイ」という怪物の伝説を知る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りー
34
「人というものは、なかなか動かないものよ。新しいことがいいことは知っていても、古いものがだめなことはわかっていても、少しの者がちょっと動いたぐらいでは、変わりはしない。でもいくつかが同時に動き、かたまりになって一つの方向へむかえば、大きな川の流れとなる。そして、その流れはだれにも止められない。」渡来人ナータの視点が面白かった。アサギの孫世代のお話で、三つの村は集まって国になり、激しく対立しだしている。そう、こんな風に物事が急に変わったのだろう。弥生時代末期の日本を想像しながら楽しんだ。2021/10/31
みよちゃん
12
アサギシリーズの後日談?アサギの孫の時代。縄文時代から弥生時代になりつつあるが、登場人物はシリーズの中の面影や伝承されてきたもの、村づくりに必要なもの、人間の成長する過程などが描かれている。声が鍵に。2021/09/06
ぽけっとももんが
10
アサギの孫であるヤヒコの成長物語。壮大な歴史絵巻になるのだね、きっと。このタイトルはキャッチーなようで特に何も象徴していない。他に何かなかったのかなぁ。妖魔の正体やその退治に主眼を置いた話ではないのだから。しかしシュー様に関してはちゃんとそれが伏線になるんでしょうね。新天地、理想郷を求めたにしては詰めが甘いというかそもそも詰めてすらいないというか。そこちゃんと辻褄あわせて説明が欲しい。文句言いつつ、スカイエマ氏のふんだんなイラストを満喫。2021/11/26
joyjoy
8
「この男は、とてもいい顔をしていると、ヤヒコは思った。 賢そうだ。それに、ようすがすがすがしい。満ちたりている感じがする」。あきらめることを知っているユンの父さんは、どんな状況でも満ちたりた気持ちで手を動かせるのかもしれないな。2021/10/19
NOYUKI
4
アサギを呼ぶ声の後日譚。面白かったー!ナータ!無事でよかった。苦労したのねえ。その上でのこのセリフ。「人にはね、損得ぬきでしなければならないときというのが、あるのよ」素敵ー。12歳のヤヒコとユンの言葉が通じない上でのロマンスも素敵。ヤヒコはあまったれのボンボンかもしれないけど、本質がわかるいい子だ。大切な時に聞こえるという〈声〉の正体を見つけたのだから。「形だけでも笑え」もいいなあ。タイトルは、ちょっと取ってつけたみたいであんまりそぐわないけど、面白かった!そして、やっぱりスカイエマの絵はいい!2021/07/21