内容説明
近代社会が喪った「雑」の魅力を語りあう
雑談・雑音・雑学・雑種・雑用・複雑・煩雑・粗雑……
現代社会が否定してきた「雑」の中に、多様性や民主主義の根っこがあり、
市場主義や「生産性」に代わる価値観の手がかりがある。
“雑”なる対話から広がる魅力的な世界。
【著者】
高橋源一郎
作家。『優雅で感傷的な日本野球』で三島由紀夫賞、『日本文学盛衰史』で伊藤整文学賞、『さよならクリストファー・ロビン』で谷崎潤一郎賞を受賞。
辻信一
文化人類学者、「ナマケモノ倶楽部」世話人、「100万人のキャンドルナイト」呼びかけ人代表。『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社ライブラリー)ほか著書多数。
目次
はじめに……辻 信一
第1章 「弱さ」から「雑」へ
第2章 「雑」なる民主主義・「雑」なるエコロジー
第3章 座談で「雑」を広げる・深める(田中優子×山崎亮×高橋源一郎×辻信一)
第4章 「雑」に向き合う宗教・「雑」を取り入れる経済
第5章 「雑」の思想は深まり広まる
おわりに……高橋源一郎
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
60
「雑」とは多様性のことと了解した。確かに世界は多様性を排する方向に動いている。ただ、その問題の発祥は一神教=西洋キリスト教による近代化だけなのだろうか。まだこの観点に関しては自分でいろいろと勉強してみたい。2018/12/27
阿部義彦
21
久々に痺れる本でした。雑種、複雑、雑多、雑草、ネガティブな意味の方が多い「雑」をキーワードにこれからの生き方を探ります。『資本主義社会って基本的に短期のスパンで回転させるもの。短期で売って最大限の利益を上げる。あとはどうなろうと構わない。「百年先の子孫に豊かな富を」なんて言ったら株主から怒られます。もう死んでますって。笑 「雑」っていうのは、ある意味今生きている人間も、まだ産まれてない人間も、死んだ人間も区別をつけないと言うこと。』雑とは曖昧で奥の深い事なのです。猫も一番人気はミックスですよー!良い本です2018/12/15
yuzyuz_k
10
たぶんきちんと文章を書いてきた方達だから「雑」をきちんと考えるのかなぁと思ったりします。 テクノロジーの世界にいたりすると結構「雑」を考慮して全体でなんとなく体裁整う様にしていると思います。 ドープ(不純物)が適度な範囲で入ってないと、半導体は一切動かないですし。(半導体と言う表現が雑ですけど) これ読むと当たり前だよなぁと 思う反面、「雑」を雑に扱わずいろんな視点から攻めて掘り起こしていくのも面白いと感じてます。 2019/06/05
Koji Takahashi
8
【『雑』な大人になろう】 グローバルよりローカル 強さより弱さ 専門的より非専門的 そしてジェネラル(全体にかかわる) さらに一歩進んだホリスティック(バラバラではない丸ごと) 『雑』とはこんな感覚と捉えました。 私が目指している社会福祉士に大きな影響を与える書に出会いました。 ローカルな場面で、ホリスティックに、弱さを持つ人を、専門家に繋ぐ社会福祉士になります。2018/12/27
Yuko
7
<現代社会が否定してきた“雑”なるものたちにオルタナティブへの手がかりを求める。“雑”なる民主主義、“雑”に向きあう宗教、“雑”を取り入れる経済などについて、高橋源一郎と辻信一が語り合う。> “雑”が孕むネガティブなニュアンスは脇におき、“雑”についての多角的な考察は、たいへん興味深い。 対談集なので、記述の重複も多く、まとまりにもやや欠けるが、その雑さも良い! 親鸞、南方熊楠、ヒルデガルド・フォン・ビンゲン、アーシュラ・ル=グゥイン、万葉集、江戸の寺子屋における学びなど、“雑”なる価値観が満載。 2019/02/18
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