内容説明
フェイクとヘイトが横行する「報道」の異常
「反日日本人をあぶり出せ」と煽る新聞、デマに満ちた沖縄報道、
「日本礼賛」の裏での外交的孤立――権力にすり寄り右傾化するマスメディアが社会の分断に拍車をかける現状に、第一線のジャーナリストと研究者が警鐘を鳴らす。
【執筆者】斉加尚代/西岡研介/川端幹人/臺宏士/北野隆一/立岩陽一郎/望月衣塑子/古田大輔/香山リカ/福嶋聡/梁英聖/辻大介
【著者】
永田浩三
武蔵大学社会学部教授(メディア社会学)。元NHKプロデューサー。
目次
序章 いまメディアに何が起こっているのか
Ⅰ 歪むメディア
1章 歪曲される沖縄の基地反対運動
2章 関西テレビ界に蔓延る「チーム殉愛」の闇
3章 劣化する「保守」論壇誌と極右運動
4章 産経新聞による記者・メディアへのバッシング
5章 「歴史戦」がもたらしたものとその結末
6章 ファクトがねじ曲げられる国際報道
Ⅱ 公正な言論空間とは
1章 「フェイク」と「ヘイト」のスパイラルに抗するには
2章 「日本スゴイ」の幻想と現実
3章 書店員として「ヘイト本」と向きあう
4章 差別・極右への対抗とメディア・NGOの社会的責任
5章 メディアの党派化と世論の分断
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
27
魯迅は言っている。筆で書いた噓は、血で書いた真実を隠すことはできないと。/いかに被害者の声に頼らないで、メディアは差別と極右の危険性を報道できるのか。被害者の声をメディアが取り上げる重要性は疑うまでもない。だが問題は、日本のメディアが、被害者の声に頼らなければ、ほとんど差別を批判できない点2018/06/24
WaterDragon
5
とても良い本に出会いました。 なぜ、メーカー(一部の出版社や新聞社)は、フェイクやヘイトを発信するのか。 その答えは、「売れるから」あるいは「PVが稼げるから」といったある意味では〝単純な〟〝資本主義的な〟ものです(そして講読者はそれを拡散し、結果、社会が分断されるわけです)。 本書が指摘しているように、メディア(出版社も含め)がヘイトやフェイクにたいして、どういった構えで発信していくのかがとても重要だと感じます。 日本が、〝反レイシズム0.0〟の位置にあることに、憤りを感じます。2018/06/29
futomi
3
13人の書き手(インタビューを含む)が、フェイクニュース、ヘイトスピーチ、ジャーナリズムなどを考察する。学ぶことの多い読書だった。 驚いたことは232ページ 日本には、包括的な差別禁止条約がないということだ。「それは差別だ!」と批判する基準を持たないということで、「なんだかおかしいな、悔しいな」という思いが個人的な感覚の相違だと無視されてしまうことだ。 262ページ「ジャーナリズムは、声をあげられない人のた めにある」がとても心強い。2018/10/19
umeko_yoko
3
ものすごい考えすぎてめちゃくちゃ読むのに時間がかかりました。わたしの浅い知識や感覚で議論をする気はまったくありませんが、なんか最近の日本おかしいよね?というのが、この本を読んで「憎悪」に通じる気持ち悪さだったのかなと。 「正しいことをコツコツ訴えても数字が取れない」「刺激の強いものほど拡散される」「日本が間違ってなかったとするためには次の敵(中国・韓国)が必要だった」など、少し腑に落ちました。 最終的にはやはり「人としてどうか」、ただそれはあくまでも「自分にとって」であってもだけど、それしかないのかなと。2018/10/05
オールド・ボリシェビク
2
ネットはとんでもないものを生み出してしまった。パンドラの筺でもあるのだ。しっかりと、自分を持とう。確立しよう。さもないと、とんでもないことにあるぞ。2018/07/31