内容説明
「あまり日本語で話をしない方がいい。皆、日本人を嫌っているから」―――中華民国初期の内戦最前線を行く「南方紀行」、名作「星」など運命のすれ違いを描く9篇。
佐藤春夫は戦前の二十数年間に中国を五度訪れた。一九二〇年、台湾から対岸の福建省へ。七年後には杭州・南京へ。しかし時代は田漢・郁達夫との友情に暗い影を落とす……。
「南方紀行」では東アジア初の社会主義実験都市・ 州を訪れているほか、「曾遊南京」で明らかになる蒋介石とのすれ違いなども興味深い。
また、「わが支那游記」は長らく行方不明であったが近年発見された。
文庫オリジナル。〈編集・解説〉河野龍也〉
目次
・星
・南方紀行 厦門採訪冊
厦門の印象/章美雪女士の墓/集美学校/
鷺江の月明/ 州/朱雨亭の事、その他
・市井の人々-大陸逸聞-
老青年
南京雨花台の女
・ 交遊の思い出-郁達夫・田漢-
西湖の遊を憶う
秦淮画舫納涼記
曾遊南京
・わが支那游記
・旧友に呼びかける
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
31
1920年の訪中を元に書かれた小説「星」「南方紀行」、1927年の再訪で書かれた旧友を訪問する紀行記録集を収録。在中日本人を描いた「老青年」「南京雨花台の女」で当時の街の様子が生き生きと描かれ、特に雨花台から南京を俯瞰する風景描写は秀逸。南京政府の秘密会議は日本語で行われるという噂もあったほど、元・日本留学生が多く参画していたようだが、折しも五四運動が起き排日気運が高まっていく中、路上で日本語を話しているのを聞かれるだけでも危険という緊張感も記されています。秦淮の画舫船で湖水の夕~夜景を堪能した体験も ⇒2021/10/04
さとうしん
4
佐藤春夫の中国紀行文および関連の小説、雑文等を収録。特に厦門旅行記に関しては芥川龍之介のものと比べるとわかりやすい面白さはない。作品の価値や背景については解説に詳しく触れられているので、先に目を通した方が良い。小説の「星」は現地人から聞いた話をもとに膨らませたものということだが、単なる才子佳人物と見せかけて思わぬ方向に話が広がっていく。2021/08/11
inahiro020
0
昔の中国が垣間見得て面白い。 文章は流暢で綺麗な印象。 名前は知ってたけど初めて読んだ。2023/10/09