内容説明
オペラはメロドラマだ!
『オペラの運命』『西洋音楽史』など、クラシック界では異例のベストセラーを放ってきた著者の最新作。NHK Eテレ『スコラ 坂本龍一音楽の学校』出演でも知られる著者だが、軽快な語り口で、まったく退屈せず、初心者でも一気に読めるオペラ入門書である。
内容はワーグナーの楽劇から映画『ゴッドファーザー』まで、硬軟にわたり約20作品を紹介。音楽史に沿って、ヴィオレッタ(「椿姫」)ブリュンヒルデ(「ワルキューレ」)トスカ(「トスカ」)らオペラ黄金時代のヒロインを中心に、ハリウッド映画の金字塔であるスカーレット(「風と共に去りぬ」)、戦後日本の象徴ともいえるマドンナ(「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」)まで、“女神”(女主人公)の魅力をたっぷり解説している。ひいてはAKB48のアイドル論に至る分析力は圧巻だ。
著者によると「メロドラマ」の語源は「メロディ」+「ドラマ」で、もともとは音楽劇=オペラを指す。本来オペラとは「大衆が喜ぶたわいない恋愛劇を音楽で盛り上げたもの」であり、映画やTVドラマと同じように「小難しく構えず、いかに素晴らしい音楽を味わい尽くすか」、これこそがオペラの鑑賞術に尽きるのだ。
(底本 2015年11月発行作品)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ムーミン2号
8
「オペラを観るために必要な勉強」はあまりないよ、ハリウッド映画とそう変わらないものだから、というスタンスで名作オペラの数々を紹介してくれている。要するにメロドラマなんだ、という切り口で、オペラを楽しむためのハードルを随分下げてくれている。音楽的素養も知識も乏しいワタシのような一ファンにはありがたい書で、もっと楽しんで観て、聞けばいいんだと思えるようになった。ただ、本書ではオペラのことばかりが書かれているのではない。19世紀のヨーロッパ社会における階級制のこと(貴族制も含む)などへの言及がある。2023/08/27
trazom
3
オペラを、芸術ではなく娯楽として捉えた軽いノリの作品。だから、「勉強になる」とか「考えさせられる」ことは何もなく、メロドラマとヒロインという二つのキーワードでの他愛ないおしゃべりを聞かされている気分。「オネーギン」のタチャーナは吉永小百合、ヴェルディの本領は任侠モノ、ワーグナー・ヒロインにはセックス・アピールが全くない、なかなか決め球が出てこないドイツオペラが蟻で、気前よく最初から大盤振る舞いして息切れするするイタリアオペラがキリギリスとか、言ってみれば与太話の連続。でもまあ、これが中々面白いんだなあ。2016/04/22
NyanNyanShinji
1
メロドラマ・オペラの嚆矢としてベッリーニ作曲『ノルマ』を挙げ定番のヴェルディ『椿姫』、プッチーニ『トスカ』などを経て、コルンゴルト『死の都』を境にオペラの後継である映画作品「風と共に去りぬ』や『ゴッドファーザー』そして『男はつらいよ』で本書は閉じられる。決して作品論やあらすじ紹介にとどまる事なく、時代背景や当時の文化論と対照させる岡田氏の手法は,本書でも鮮やかである。2023/03/17
Ikuo Kobayashi
0
著者は思い込みが激しい感じでついていかれない部分も多いですが、オペラはメロドラマだとの主張は大いに共感します。オペラシーズン、早く始まらないかな。2016/09/03
つばき
0
しかるに、どの時代にも女性の願望を表しているのがメロドラマ。清く美しいヒロインたちよりも、魅せる脇役達。女性の願望は男性目線だとみんなステレオタイプのつまんない女と言われてしまうのですね、淋しいけれども納得です。紹介されている音源、なかなか聞くのがか難しそうなのもありますが、探してみたくなりました。2016/01/18