内容説明
環境問題や資源問題など,私たちの生活と地続きにあるさまざまな社会問題を解くひとつの鍵となる「社会における協力的な関係はいかにして成立するか」という問いに,ゲーム理論などの既存研究を総合的にレビューしながら社会科学的アプローチで取り組む。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぷほは
5
キングカズの新刊が未だ読了登録ゼロとは驚く。サブタイトルから分かるように、『制度論の構図』の続編として読めるが、ずっと平易で分かりやすい、難解な数式部分は飛ばして読んでも十分知的興奮を味わえる。コールマンの規範生成論の箇所はパーソンズの秩序問題解決法と同じような展開になっているという批判だろう。DC状況においては規範の内面化と文化の共有によってコミュニケーション可能となる→じゃあどうやってその内面化や共有は達成されたの?という問いに著者は「理念的実在」というメタ概念を提示する。正に、社会学の王道らしく。2021/07/23
Go Extreme
1
協力問題とは何か 近代社会思想のなかの協力問題 利他性と協力の進化 オルソン問題再考 しっぺ返し戦略への注目──ナッシュ均衡とESS 進化ゲームと間接互恵性 規範はいかにして創生するか 共有資源とN人囚人のジレンマ 塹壕戦における協力関係はいかにして成立したか 攻撃はメッセージである なぜ人びとは実験ゲームで協力するか 信頼と社会関係資本 協力はいかにして可能か──コミュニケーションと制度2021/07/29
ゼロ投資大学
0
ゲーム理論を活用して、周囲との協力が欠かせない事例でいかに円滑に協力できるよう導くか、示唆を与えてくれる。自身が自己の利益を求めて利得のみを追求すれば、一時的な利益は得られるものの、結果として損をしてしまう事例は多く見られる。囚人のジレンマと言われる相反する条件の中で、周りが納得して協力できる環境をどのように構築していけばよいか考えたい。2023/03/15
odmy
0
人はなぜ協力するのかはゲーム理論では説明できず、人々がコミュニケーションを通して構築する「制度」という概念が必要だ、ということを示した書。そのコンセプト自体は著者の代表作の『制度論の構図』と同じだけど、本書の場合、「ゲーム理論では説明できない」の部分を示すのに議論の大半を集中させている。ゲーム理論なので数式は割と出てくる。でも説明が非常にわかりやすいので、予備知識がなくても読めると思う。ゲーム理論に変な幻想を持つ前に読んでおきたい本。