内容説明
刊行以来、賛否両論を巻き起こしたエスノグラフィ、ついに翻訳。
社会学の巨人アーヴィング・ゴッフマンを父にもつ著者・アリスは、フィラデルフィアの黒人居住地区「六番ストリート」に六年間暮らし、さまざまな罪状で追われる若者たちと日々を過ごす。
頻繁に行われる逃走劇や、警察による家宅捜索、刑務所を訪れる恋人や犯罪に加担する家族たち――。
麻薬や殺人とも深く結びついた生々しい営みをつぶさに観察していく中で、アリスは大きな事件に巻き込まれていく。
犯罪が日常化した暮らし、巨大な影響を及ぼす司法システム、それに対する人々の一筋縄ではない関わり……。「これが、アメリカで生きる黒人たちのリアル」
【目次】
■ プロローグ
■ まえがき
序章
第一章 六番ストリートの少年たちと彼ら彼らの法律上の問題
第二章 逃走術
第三章 警察がドアをガンガン叩くとき
第四章 法律上の問題を個人的に使える手立てに変える
第五章 犯罪者となった若者たちの社会生活
第六章 保護と特典の市場
第七章 クリーンな人々
結論 逃亡者のコミュニティ
■ エピローグ――六番ストリートを離れる
■ 謝辞
■ 付録――方法論ノート
■ 原注
■ 訳者解説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
J D
64
アメリカの黒人社会の問題というよりも白人の問題を描いた研究書。ユーチューブでもアリス・ゴッフマンのこの本に関する講演を聴ける。フィラデルフィアでの問題、社会の掟、生き方、そこに住む人たちの価値観が分かる本。黒人は、米国人口の13%であり、囚人の37%を占める。この数字はアメリカ社会を雄弁に語っている。少し数値の違いはあるが、日本では3割の再犯者が6割の犯罪を犯しているというが、それ以上に衝撃的な数字だと思った。2023/08/27
しんい
12
警察に逮捕されあるいは逃亡し、裁判所に通い収監されることすら人生の一部に「組み込まれている」フィラデルフィアのアフリカ系社会で暮らす人々を、インナーの視点から白人の社会学者が描く傑作。どういう関係性?友達?恋愛対象?研究対象?と感じるところはある。それでも、統計や警察・政治からの視点や、差別や貧困撲滅といった視点とは異なり、今のアフリカ系アメリカ人の人生そのものを正面からとらえている点が間違いなく斬新。裁判や獄中のパートナーを支える役割をこなすことが社会的に求められる点などは、正しくはないが現実的である。2023/01/17
まこ
12
ドラッグや軽犯罪など警察に狙われる心辺りがある、白人警察官は黒人相手だと厳しくなる。この終わりのないループを著者自ら貧困の黒人コミュニティで過ごすことで体験していく。著者は白人の富裕層だけど、住人達からは普通に受け入れられるものの、本として不特定多数に読まれることを考えたらあまり感情移入した文章にしにくいのかな。2022/09/03
minamimi
5
米国では賛否両論ある本みたいだけど、司法システムが悪い方に機能しているのは確かなんだろう。2022/01/31
しまうま
4
付録の「方法論ノート」が一番価値があるのではなかろうか。倫理や調査方法に学術的批判が出るのは学問が健全な証拠。でっちあげかどうかは信じるしかないけど、エスノグラフィーとルポルタージュの中間ぐらいな感じかな。2021/10/13