内容説明
万国の労働者よ、駄々をこねろ!
コロナ禍でさらに屈折する現代の労働倫理や規範意識。「はたらかざるもの、食うべからず」。私たちはなぜ心身を消耗させながら、やりたくない仕事、意味のない仕事に従事し、生きるためのカネを稼ぐのか。
社会からはいつでも正しい生き方や身の処し方が求められ、もっと頑張れ、努力しろと急き立てられる。そこから逸脱すれば落伍者。そんな世界は正常か?
気鋭のアナキスト文人が、フーコーからグレーバー、『古事記』から『鬼滅の刃』、果ては近所の野良猫までをも俎上にあげながら、資本主義の絶対的な権力性を背景にした労働倫理を相対視し、そこから踊るように抜け出す道を拓く。未来をサボれ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
94
著者の主張は、近代資本主義は古い奴隷制の新しい姿と捉え、労働の未来からの逃散である。座右の銘は「はたらかないで、たらふく食べたい」。コロナ禍で個人に給付金を配られることは、カネが尺度の資本主義社会の裏返し。もっと要求することは更に国家に依存する度合いが高くなること。人間を労働力商品と扱い、労働という時間による支配から抜け出すには、「非対称の戦争」が必要であり、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のモデルとなった海賊ジョン・ラカムや大杉栄を引き合いに出し、「未来をサボれ」とアジを飛ばす。新書だが、刺激的な一冊。2021/12/04
けぴ
40
村上龍さんの『コインロッカー・ベイビーズ』風の現代社会に対しての批判をさまざまな角度から書き散らしたエッセイ。まとまりはなく散文的で何か結論があるかと言うと無い。NHK出版らしからぬ一冊。2023/02/04
ケイトKATE
35
煽ったり、ギャグを含んだ文章が登場して、人によっては眉を顰めるかもしれないが、私は面白く読めた。私が著者栗原康に共感したのは、はっきりと仕事が嫌いと書いているからである。(私も仕事が大嫌い‼︎)金や権力、時間に支配される資本主義は、現代の奴隷制度と痛烈に批判する著者の言葉に頷くばかりだ。アナーキストである著者は、奴隷にならないために、18世紀の海賊や19世紀前半のイギリスで起きたラッダイト運動などを例に取り上げ、抵抗し、逃げ、自発的に動き、相互扶助をしていく必要性を訴えている。サボるのもいいよなぁ。2022/06/30
ま
32
初めてみるタイプの著者かも。ラッダイト運動は正直今まで時代についていけない輩のしたことだと馬鹿にしていたけど、これは人間らしさを取り戻すための闘争だったんだ。資本主義社会という当たり前の前提を崩壊させてくれる本。2024/06/11
きゃれら
22
アナキズムは魅力的だ。誰にも支配されないことは素晴らしい。本書は、人類が農耕開始以来繰り返してきた支配の陰惨さとごくたまに成功した瞬間があったそこからの離脱の楽しさを語ったエッセイ集。哲学というけど難しいことを語ってはいない。ジョン・ロックまで遡って社会契約の欺瞞を告発していて、なるほどだった。反乱者たちが陥る罠も言及していて誠実である。著者の本音は、それでも秩序がないと暮らせないよね、なのかもしれない。心を資本主義に明け渡さないため、あるいは心が折れそうになっているなら立て直しのため、いい本だと思った。2023/07/03




