内容説明
「『丸』を読まずして平和を語る勿れ。『丸』は戦争と軍事科学のやさしくて高級な専門雑誌です」をスローガンに、唯一無二の地位を確立し、石破茂、佐藤優、池上彰などの著名人も愛読者であったことを公言する長寿戦記雑誌『丸』。昭和23年に「総合雑誌」として創刊されていたという忘却された過去から始まり、戦記雑誌化し部数を延ばす昭和31年以降の誌面の変遷を追いながら、戦争をめぐる社会言説の変容を解明する戦後史論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
無重力蜜柑
11
面白過ぎる。軍事通として名高い新首相(なお……)も愛読していた戦記雑誌『丸』を題材とするタイムリーな文化史。ちなみに彼についても言及される。戦後日本の戦争像を論じる研究は色々あるが、いわゆるミリオタに焦点を当てた研究はほぼないのでは。非常に希少性のある本だと思うし知的刺激に富んでいる。期間としてはだいたい戦後から二十世紀末まで。敗戦直後の混乱の中で軽めの総合雑誌として始まった『丸』は、戦争遺族や帰還兵の慰め、情報交換の場として勇壮な戦記を掲載するようになり、やがて戦記雑誌へとシフトしていく。2024/10/04
Toska
8
著者の専門はメディア史とのことで、軍事史とはまた異なる深みをこの研究に与えているように思う。とりわけ、60年代に主力をなした若年読者層(いわゆる「丸少年」)にとって、反戦平和を主流とする当時の学校教育においては軍事知識こそが「主体的に」学び取ることのできる「教養」であった、との指摘が非常に興味深い。一部の軍事マニアが奇妙に傲慢な印象を与えるのも、この辺りに起源があるのかもしれない。「教科書が教えない…」という煽りは、当時から使われている陳腐なものであった。2022/08/01
風見草
2
軍事オタク向け雑誌「丸」の紙面から見た、軍事趣味メディアの社会史。 1950年代は戦没者遺族が死者の参加した戦いを知るために読んだという読者投稿があったり、1960〜70年代には誌上で戦争の是非そのものが論じられ前田哲男や色川大吉の投稿まであり、以降は軍事オタク向けの専門家の解説が主流になっていった。 時代によって紙面も読者層やリアクションが変わっていって、保守色の強い軍事オタク向けの紙面である現在からは分からない時代の姿が感じられて興味深い。
晴天
1
戦後直後に創刊された雑誌『丸』の誌面と読者の声から、戦記や兵器への関心の変遷とを検証している。当初当事者の回顧や遺族の心の整理という側面の強かった読者層に、1960年代には少年という戦争を知らぬ世代が出現し、学校教育への違和感から『丸』を読み、自発的に知識を得て一家言持つようになったというあたり、自分の少年時代は30年前から繰り返されているよくあるパターンでしかなかったのかとも思った。ただ、1960年代における少年層における『丸』の存在感の大きさ、同誌を読むことのエリート意識には隔世の感があった。2024/10/31
ガジ
1
北海道旅行中に読んだ。雑誌の投稿欄、どこでも研究対象になるなぁ。個人的に面白かったのは総合雑誌だったものが戦争雑誌へと変わっていくところ。平和だからこそ戦争をしることが必要という言説も理解はできる。長崎行きたい2023/09/04
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