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内容説明
昭和20年(1945)3月、重要拠点ゆえにB29に爆撃され、壊滅的被害を受けた大刀洗飛行場(福岡県)。大正8年(1919)に完成したこの飛行場は、その後、陸軍飛行学校や技能者養成所が置かれ、東洋一と謳われた。国民学校を卒業したばかりの15歳の少年たちは、この地で速成され、ある者は整備兵として、そしてある者は特攻兵として戦場へと送り出されていったのである。当時を知る者が数少なくなる中、大刀洗飛行場で若き日を送った4人に、直木賞作家・安部龍太郎が取材。古代から近代まで、数多くの歴史小説を上梓してきた著者が、満を持して初めて「太平洋戦争」に取り組んだ。 【目次】●序章 大刀洗飛行場を訪ねて ●第一章 松隈嵩氏への取材――技術者たちの苦闘 ●第二章 信国常実氏への取材――生き地獄を味わった整備士 ●第三章 河野孝弘氏への取材――陸軍の迷走と「さくら弾機事件」 ●第四章 末吉初男氏への取材――特攻兵の届かなかった手紙
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Isamash
25
作家安倍龍太郎2021年発行著作。特攻隊に関わった4名へのインタビューを中心の著作。飛行機パイロットだけでなく陸軍飛行機の設計士、エンジン整備士、整備工も含み、技術的なことを聴けているのがとてもユニーク・貴重で、新鮮味も覚えた。B29に対抗しようとした震電の開発のことなどが書かれているが、工場を守るための防護壁の非実用的な設計エピソードが興味深かった。全く役に立たない強度だったらしいが、やらないよりマシと推し進められたとか。現在にも続く不合理性。フィリピン陥落前に真っ先に脱出したエリート参謀エピソードも。2024/06/01
りんだりん
17
大刀洗飛行場は実は私の実家のすぐ近くにあった。今でも所々に当時の門や壕のあとがある。この本は、著者が講演のあと立ち寄った大刀洗平和記念館で出会った様々な資料がその後も頭を離れず、記念館の副館長のはからいで当時の飛行兵や整備工として大刀洗飛行場に関わられた4人の方々にインタビューをもとに構成されている。著者がやがて上梓する予定の「不死鳥の翼」の取材も兼ねて行われたもので、当時の戦況、大刀洗飛行場の状況、4人の方々の置かれた立場や想いが痛いほど伝わってくる。故郷の歴史を学べた一冊であった。★32022/02/26
筑紫の國造
12
こうした「戦争体験者」の証言を得ることは今後極めて難しくなるだろう。本書は、小説家の安部龍太郎氏が自身と縁のある太刀洗飛行場に関係した、四人の戦争経験者の回想をまとめたものになっており、さすがベテラン作家、と唸らせる構成となっている。本書の経験者の話はいずれも興味深いものであるが、最も印象に残ったのは最後の生還した特攻隊員の方の話だ。自分が特攻隊員となり、家族や祖国を守るはずだったのに、その家族が自分のいない間に亡くなってしまった件は、あまりにも悲しい。「等身大の戦争体験」が描かれた、貴重な一冊。2021/08/16
0717
10
近々、太刀洗平和記念館に行きたいので予習のつもりで。当時東洋一と謳われた太刀洗飛行場と併設の陸軍飛行学校、整備技能者養成所にゆかりのあった四人への取材。重さ2.5tの対艦用爆弾を飛龍に搭載し特攻を図るさくら弾機など初めて知った。特攻機がエンジンの不調でやむなく石垣に不時着し、輸送船で戻って司令部に報告に行くと、部隊長より「無事生還を遺憾に思う」と言われたそう。その時のことは今でも忘れないという。2025/07/11
鬼山とんぼ
9
歴史には鳥瞰的時系列的に把握すべきものと蟻の目から人間的具体的記述で実態を知るべきものがある。どちらの視点にも通じており、地元出身で父親や先輩に関係者がいる稀代の歴史小説家である安部さんがこのテーマに出会えたことに大いに感謝したい。4人とも傑出した高潔な人たちだったが同様に有為な若者が大勢死んでいったことは痛恨の極みである。この暴挙の原因は強引で愚劣な大陸侵略戦略だったが、その遠因としてロシアの南進政策を恐れた吉田松陰から始まった征韓論、その弟子で陸軍のドンであった山縣有朋、これに連なる山口県人脈がある。2024/11/28
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