内容説明
お互いのことはお互いが一番よく判っている――特別な関係で強い絆を持つ真美と祥子。小学校からの付き合いで、二十三歳になった今でもふたりには誰にも言えない秘密がある。しかし、綾子と名乗るカウンセラーと出会ってから、祥子の様子がおかしくなり、忽然と姿を消してしまった。“祥子が私を拒絶するはずなんてない!!” そう強く信じずにはいられなかった真美だが、現実はもっと深刻なもので……。感涙の青春長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はなん
24
時を経て再度読んだこの物語は、当時とても苦手で読み直すことのできなかった1冊。ところが今回は。。真美の気持ちも祥子の心も。母と子の関係を素子流にSFするとこうなるのかな?と浅いところでは感じつつ深いところでかなり心に突き刺さる部分もあり、、やはり得意なお話ではないのだがわかる。そういう世界だった。時を経て手に取る意味。というものを実感。2012/11/11
かえるくん
12
頭脳明晰、身体能力抜群、容姿端麗と三拍子揃いながら生活能力ゼロの祥子とそんな彼女の保護者のような真実(まみ)の前に、綾子と名乗るカウンセラーが現れて二人の関係性が変わり始める。女性の友達関係に顕著な共依存という現象に見られる問題をあるSF要素を通して浮き彫りにする、すべての女性のために書かれた小説。青春まっさかりの女性にとってはある種の通過儀礼に、大人の女性にとってはかつての自分に思いを馳せられる内容になっているのではないかと思う。男性の自分の心にもじゅうぶん食い込んできた。力作です。2013/04/06
不在証明
10
新井素子は「くますけと一緒に」しか読んでいないので断言できるわけじゃないけれど、ハッピーエンドなんだけど捉えようによってはバッドエンドにもとれる不穏さが良い。内容も、お手本のようなコメディに始まりつつエンタメの枠は揺るがずに、「あたし、頼んだ?あたしを作って欲しいって」などサラリと重い言葉が飛び交う。まさかそんな突飛な方向へ話が進んでいくとは。友情に見せかけた母娘の物語に見せかけた友情物語?あとがきが笑える。2016/06/14
☆kubo
10
久しぶりに読み返したけど、全然忘れてなかった。目は活字を追ってるけど、心は記憶の中の文字を辿っている感じ。間違いなく自分を形成してる本の一冊。2012/10/18
紫伊
8
誰もが幸せや愛を求め関係を築いていくけれど、その関係の形は様々。本人は正常だと思っていても他人から見ると歪んでいることやひずみがあることもある。無自覚の歪みでもどこかで気づいてたださなければ壊れてしまう。「愛」と「憎しみ」は延長にあるものだと感じました。恐ろしくも引き込まれる一冊でした。2016/08/23