岩波現代文庫<br> 老いの空白

個数:1
紙書籍版価格
¥1,232
  • 電子書籍
  • Reader

岩波現代文庫
老いの空白

  • 著者名:鷲田清一
  • 価格 ¥1,232(本体¥1,120)
  • 岩波書店(2021/07発売)
  • ポイント 11pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784006032791

ファイル: /

内容説明

人生における〈空白〉として捉えられてきた〈老い〉.しかし超高齢化時代を迎え,〈老い〉に対する我々の考え方も取り組み方も変化を余儀なくされている.〈老い〉を問題とする現代社会の有り様にむしろ問題はないか?「日常」「アート」「顔」など身近な問題を哲学的に論じてきた第一線の哲学者が,現代社会の難問に挑む.

目次

はじめに┴1 〈老い〉はほんとうに「問題」なのか?┴あたりまえの視点┴「介護問題」としてせりだしてきた〈老い〉┴〈老い〉をめぐる固定観念/高齢者介護の歴史的経緯┴〈ケア〉についてのこれまでの語られ方┴かつてこんな〈老い〉があった┴2 できなくなるということ┴〈老い〉の重なり┴〈老い〉の気づき┴できなくなったという意識┴〈老い〉と疲労┴3 〈老い〉の時間 見えない〈成熟〉のかたち┴「大人」になれない社会?┴成熟と成長┴プロスペクティヴな時間┴成長と衰弱というメタファー┴消えた〈成熟〉のモデル┴〈成熟〉の時間とは?┴まとまらない時間┴4 〈弱さ〉に従う自由┴〈老〉と〈幼〉の対称性┴〈反世界〉のまなざし┴他なるものの受容┴「定年」はモデルにならない┴みずからの存在への問いにさらされる?┴「できない」ということ・再考┴シュノイキスモス┴相互依存(interdependence)と協同┴「弱いもの」に従う自由┴5 ホモ・パティエンス べてるの家の試み┴「弱さを絆に」┴奇妙なクリニック┴「苦労をたいせつに」┴「安心してサボれる会社」┴語りあうことの意味、「再発」することの意味┴「ひとりで勝手に治るなよ」┴6 肯定と否定のはざまで┴「できない」ということ・再々考┴「ある」を起点に┴暴力としてのケア┴逃げ場のないループ┴置き去りにするケア┴ケアにおける「専門性」┴7 「いるだけでいい」「いつ死んでもいい」と言い切れるとき┴「無為の共同体」┴非全体性の思考┴高貴なまでのしどけなさ┴意味の彼方┴「痴呆」というあり方┴通り抜けるものとしての家族、あるいは「その他の関係」┴受けとめと付き添い┴選ばれるということ┴エピローグ 一枚のピクチュアへ┴あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

69
鷲田清一の‶老い″をめぐる論考。これは哲学する人が書いた本なので、老いつつある自分に慰めを求めたり勇気を得ようとして読むと、期待値から外れてがっかりするかもしれない。「老い」には成熟のモデルがなく、無力、依存、あるいは衰えそういうセルフイメージのなかでしかないこと。<老い>をネガティヴにとらえるのは、産業社会の特殊な思想であり、狭い固定観念だということを論じている。「<老い>の時間-見えない<成熟>のかたち」の章までがその中核部分で、中盤以降の「ホモ・パティエンス―べてるの家の試み」の章から「できる」とい2016/03/25

ニッポニア

43
空白を作る、新しい発想ですね。誰にも訪れるであろう「老い」について語り下ろしたという本。アンラーンとして、空白を作ることは有効です。以下メモ。老いの意識はその外にあるものの老化という事実からくる。人間にあっては近いもの、大事なことほど見えにくい。24時間要介護の場面でさえ、ケアは本当は双方向的。水泳教師に微笑み、手を振る老婆の姿、何気ない日常に心が締め付けられる著者の感性よ。2023/03/18

しゅん

22
高齢化社会へと邁進する日本において、「老い」の場所がない。介護問題や5080問題という言い方に顕著なように、「老い」を「問題」としてしか扱えないことが本当の「問題」なのだ。書名にある「空白」とは、老いを捉えきれていない社会の気配を表したものだ。「老い」は普段意識されず、「できない」という認識と共に間欠的に表れる。その「できない」を、効率的処理能力の欠落ではなく、呆け=惚け=エクスタシー(=外へ出ること)の体験として、他者と一つにならないまま共に生きるための感覚として、捉えなおしていく。2023/01/05

しゅんぺい(笑)

6
鷲田さんの本はときどき、これしかない、というくらいに読みたくなる。本書は新しく文庫になった本ということで偶然読んでみたけど、思いもよらず、鷲田さんのなかでもいいなぁと思えた本。 こういう言葉を待ってたって、読んだあとでそんなふうに思える言葉に出会えたから、もうそれだけでこの本を読めてよかったと思う。そう、成熟とか、老いというのが、本当にせまい意味でしかいまはとらえられてないと思う。老いの意味を積極的に見出そうとする、そんな作業が必要であって。2015/03/29

けいしゅう

5
老いを問題としてしか捉えられないのは生産力主義に基づく狭隘な人間観であるとし、そもそも人は支え合わなければ生きていけないことを踏まえて、老いることにポジティブな意味を見出そうとしています。なぜだか井上大輔の名曲中の名曲「めぐりあい」がずっとフラッシュバックしてました。2018/02/05

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/9286527
  • ご注意事項

最近チェックした商品