内容説明
アイヌ民族の愛すべき文化と、二風谷を舞台に著者の一族が経験した過酷な歴史……散逸するアイヌの民具蒐集に奔走し、また生涯アイヌの文化伝承に尽くした著者による半自伝的エッセイ。未文庫化の『イヨマンテの花矢 続・アイヌの碑』も収録した待望の復刻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
JKD
7
貧しくとも豊かな自然と優しい人たちによって継がれていく北海道の先住人、アイヌ民族。このアイヌの血を引く著者の波瀾万丈な人生やアイヌ文化を守り抜くために奮闘する姿など、とても勉強になった。とくに和人から旧土人と呼ばれ、強制徴用や粗悪な土地への強制移住など侵略とも言える差別行為を克明に記した文書は当時の残酷さを強く物語っており、現代においてもなおこの黒歴史が問題視され続けるのも納得できました。2021/07/24
belier
6
アイヌ民族として生きた一人の男性が日本語で書いた自伝。幼少の頃、日本語を知らない祖母にかわいがられたため、1926年生まれにしてはアイヌ語が堪能な著者。家が貧しかったため、小学校を出てすぐ働きに出て苦労をするが、山の仕事で若くして親方となる。アイヌであることを若い頃は嫌っていたが、やがて民族意識に目覚め、アイヌの口承文芸や工芸を伝え広めること、権利の回復を求めることがライフワークとなった。国会議員にもなりアイヌ新法成立に尽力した。その並外れた人生を通して、アイヌ民族の豊かな文化と苦難の歴史を紹介している。2022/07/08