内容説明
姉・由紀は少年とともに、海辺の基地の町でピアノのあるバーを経営していた。少年の楽しみは閉店後に、海岸で出会った黒人兵・ジョニー、ベース弾きの健ちゃんの3人で、ジャズを演奏することだった。だが、何ヵ月かして、ジョニーは突然姿を消す。ベトナムへ行ったのだろう。そして、10ヵ月ぶりに現れたジョニーはすっかり人が変わっていた。人を殺した自分にジャズは演奏できないという。ジョニーはピアノを拳銃で撃ち抜き、店を飛び出した……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
GAKU
44
五木寛之氏の初期の短篇集。表題の『海を見ていたジョニー』を初めて読んだのは中学生の頃。その時は深く感銘を受け、ずっと思い出に残っていた作品。50年ぶりに再読。クラス会で何十年振りかに初恋の人と会って、”会わないで良い思い出のままの方が良かった”と同様の印象でした。色々な小説を読んで、私も擦れてしまったのでしょうか。2022/07/16
かんらんしゃ🎡
34
★ジョニーって、女を2時間待たせたうえ元の踊り子でまた稼げるわと言わせたヤツだろ。モリミーの四畳半でも見かけたな。戦場にも行ったと聞いたぜ。本が書かれた頃はベトナム戦争真っ只中。戦地から生きて帰ってもPTSD。もうピアノは弾けないと言っていた。けど苦悩を知ったからこそ本物のブルースが演れるんじゃねーの。誰もそう言ってやれなかったのは残念だ。★学生の頃、五木寛之と公房ばかり読んでいた。50年たって図書館で借りた本は、字は小っちゃく紙は黄色くくすんでいて、思い出はやっぱりセピア色だった。 2022/07/27
peace land
7
五木寛之の初期の作品ということで、読みました。雰囲気のある静かな作品でした。突き放すように書かれていて、その中に作者の苦悩も見え隠れする味わいの深い作品でした。これからずっと書き続けているのだから、すごい作家だと思いました。2022/01/05
かずぺん
6
最後にどんでん返しがあって、それが自分自身の詰めの甘さにつながるところがいいですね。2021/09/01
明石
1
楽しみにしていた名作短編小説の新装版。これがデビュー翌年の作品とは、、五木寛之氏、天才では?2021/07/20