内容説明
1963年3月21日、翌年の東京オリンピック開催を前に、公式記録映画の監督を務めることになっていた黒澤明が降板した。博打をしのぎにしている白壁一家の人見稀郎は、親分からの指示を受け、中堅監督の錦田を後任にねじ込んで、興行界に打って出るべく動き出す。オリンピック組織委員会には政治家、財界関係者が名を連ねており、その下には土建業者や右翼、ヤクザ、さらには警察までもが蠢いており、あらゆる業種が莫大な利権に群がっている。稀郎は記録映画の監督選定に権限を持つ委員たちの周辺を洗い、金や女を使って言うことを聞かせようとする。東京が、日本が劇的に変貌を遂げた昭和の東京オリンピックをモチーフに、現代エンターテインメント小説の旗手が放つ、長編社会派クライムノベル。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えみ
63
「もはや戦後ではない」を明確に世界へアピールしたい日本の希望。五輪という日本戦後一大事業に酔わされた人々が、それぞれの思惑を抱いて覇権争いを繰り広げる。利権に目を眩ませた政界人、目端の利くヤクザ達。裏工作に賄賂、脅しに裏切りなんでも来い!そんな中、オリンピック記録映画監督のポジションにある特定人物を据えるため、ヤクザ・人見稀郎は様々な手段を講じて暗躍する。が…敵も一筋縄ではいかない手強い相手ばかり。五輪に酔わされ、まるで酩酊したまま千鳥足で断崖絶壁を歩いているようだ。危ない道を突き進む稀郎に終始ハラハラ。2023/09/18
ぷにすけ
17
戦後、ようやく復興のきざしが見え始めた日本で行われることとなった東京オリンピック。利権に群がる人々たちを描いたお話ですが、くしくも昨年行われた東京五輪・パラの開催経費が1兆4238億超えの記事が・・・。コロナの影響があるとはいえ、今も昔もかわらずか?2022/06/22
鮫島英一
8
1964東京オリンピックの記録映画を巡るフィクション。僕達は結論を知っているが、そうとは知らぬヤクザ「人見稀郎」は、中堅監督「錦田」を巨匠「黒澤明」の後釜に据えるべく駆け回る。ヤクザ得意のはったりと脅しで徐々に前へ進むかと思われたが、昭和の巨悪達が立ちふさがる。大戦を生き抜いた魔物の前では、ヤクザであろうとも虫けらのすぎない。人としての在り方や無力さ。ヤクザと僕みたいな市民は共感を思えることはないはずだが、それを感じさせてしまうのは作者の巧さなのだろう。2021/07/26
chikap610
6
読みました。なんだろうな、このタイミングで読まなくてもよかったのかな… まぁさ、利権ピックなのは今に始まったわけじゃないけど、読んでて空しかったよね。 そもそもオリンピック無くす必要は無いけど、アマチュアスポーツの祭典である原点に戻ってさ、参加する選手からは参加費を取った方が良いよ。それと協賛企業からの出資で全ての運営賄う仕組み。 今時、どんなスポーツだって機材含めおカネかけなきゃ上に行けないんだからさぁ。この本の感想からずれちゃった、 2021/09/04
terukravitz
6
★☆☆☆☆2021/08/09