講談社選書メチエ<br> 近代アジアの啓蒙思想家

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講談社選書メチエ
近代アジアの啓蒙思想家

  • 著者名:岩崎育夫【著】
  • 価格 ¥1,815(本体¥1,650)
  • 講談社(2021/07発売)
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  • ISBN:9784065241776

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内容説明

香港に国家安全維持法を導入した習近平の中国、ミャンマーの軍事クーデタ、フィリピンで強権をふるうドゥテルテ大統領など、現在、アジアの国々で、自由と人権の尊重、民主主義といった近代の潮流とは逆方向の動きが目立っている。アジアではこの100年余り、西欧起源のこうした思想と原理で自国を作り替える試みが続いてきたが、いまだ完全に自らのものとするに至っていないのである。しかもこうした「逆方向の動き」は、アジアのみならず、欧米社会でも起こっている。
そもそも、ヨーロッパに生まれた「啓蒙思想」は、アジア各地の知識人にどんな衝撃を与えたのか、そして、彼らはどんな社会をめざしたのか。アジア各国の啓蒙思想家の生涯から、近代アジアの苦闘の歴史と、現代にいたる矛盾をとらえ直す。
序章では、その最初期のモデルとしての福沢諭吉を取り上げる。以下、中国で革命を志した陳独秀と胡適、インドネシアの女性運動の先駆者カルティニ、インドのネルーとガンディー、朝鮮の儒教知識人・朴泳孝、日本に近代化を学んだベトナムのファン・ボイ・チャウ・・・。いずれも、アジアの進むべき道をしめした「道先案内人」であり、日本の啓蒙思想家・中江兆民が言うところの「種を播いた人」であった。そして、「啓蒙思想」は過去のものではなく、それを実現するための運動は今も受け継がれて「現在進行形」なのである。

目次

はじめに――啓蒙思想は「過去のもの」か?
序章 啓蒙思想の誕生と明治日本
1 アジアを「文明化」する思想
2 福沢諭吉――アジア啓蒙思想の先駆者
第一章 ヨーロッパは革命の賜物だ 〈中国〉陳独秀と胡適
1 儒学への抵抗と孫文の限界
2 民主主義と科学――陳独秀の反骨
3 アメリカとの協調――胡適の台湾支持
第二章 それは私の一生の望みです! 〈インドネシア〉カルティニとハッタ
1 オランダの植民地教育と「文明化」
2 「留学組」の独立運動――ハッタの民主主義
3 民族覚醒の母――カルティニが見た光
第三章 われわれの人生は、枯木に行く手を塞がれている 〈インド〉ネルーとガンディー
1 カースト制度とイギリス支配
2 反近代西欧文明――ガンディーの論理
3 誇りあるインドの発見――「文明家」ネルー
第四章 残念ながら、私はわが国に生まれた 〈朝鮮・ベトナム・タイ・シンガポール・トルコ〉
1 朝鮮の「挫折」した近代化改革――朴泳孝・兪吉濬
2 ベトナムの儒学知識人――ファン・ボイ・チャウ、ホー・チ・ミン
3 王朝国家タイの立憲革命――チュラロンコン、ピブーン
4 シンガポール「イギリスか、中国か」――リム・ブーンケン、タン・カーキー
5 イスラーム国家トルコの近代化――ムスタファ・ケマル
終章 一身にして二生を経るが如く――近代アジアの共通体験
1 近代アジアの自立運動と日本
2 啓蒙思想と現代アジア

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

樋口佳之

53
啓蒙思想(社会主義思想もか)はヨーロッパにおいて内在する課題を乗り越えるものとして生まれてきたものであるのに、アジアにおける受容は植民地支配からの解放という外的課題の克服に従属するものとしてあったのだなって、その歪みは現在にも引き継がれているのではなんて読み終えました。ホーおじさんの懐の広さは魅力的でした。2023/03/24

羊山羊

20
アジアがいかにして近代的思想を自国に取り入れたのかを、各国の著名な啓蒙思想家達を例に上げながら迫る。様々なパターンがあるが、おおよそは、「発蒙思想を用いて、自国の古い伝統を変革しようとしたということ」と、「植民地化への抵抗」の2種に分けられる。その中でも特にインドは面白く、西洋の物質文を堕落として、西洋文明を取り入れつつも自国の伝統への強力なプライドは忘れない。この辺り、今でも独特な発展の仕方を続けるインドのあり方に通じるものがあるのではないかと思う。→ 2024/06/04

小鈴

18
ありそうでなかったアジアの啓蒙思想家をまとめた本。日本から始まりトルコまで。先に大東亜時代の『初等科地理』の教科書を読んでいるから、余計に身につまされる。日本は良くも悪くも冊封体制下にはなく儒教を批判し啓蒙思想を吸収。日本がアジアの啓蒙思想ハブセンターになる一方、黄色い西欧国家として朝鮮、中国を抑圧する。遅れて目覚めた中国やベトナムは啓蒙思想だけでなく共産主義に出会う。保守派(儒教)、啓蒙思想、共産思想の三つ巴。中国は、知識層の啓蒙思想の多い国民党を追い出したんですよね。啓蒙思想が弱い理由に納得だ。2021/11/07

小鈴

15
最終章の「一身にして二生を経るが如く---近代アジアの共通体験」が味わい深い。グローバリゼーションの結果、西欧がアジアに到達し、近代思想と科学と出会い、中国を中心とした儒教的価値観が相対化されていく。アジアの大半は儒教的価値観から脱却する必要に迫られた。それは2千前に出来た統治思想からの大転換だった。西欧から生まれた啓蒙思想は西欧型教育をアジアにも普及し、その結果、植民地から独立していくという皮肉な結果となった。啓蒙思想は西洋に限定しない解放の思想だった。西欧から見れば、西洋化された東洋の紳士(WOGs)2021/11/07

templecity

14
アジアの啓蒙思想家がどのような背景で出てきたのか。欧米での民主化は神は絶対という位置づけで君主が統治していたが、革命等によって民衆が統治することが可能となった。アジアでは産業や技術の発展した欧米が攻めてきたが立ち向かうことが出来なかった。それ故、同じように昔からの慣習や教えの下では駄目だという危機感から啓蒙思想家が出現した。また日本がいち早く近代化したことから、日本を真似て近代化を目指す思想家もあった。孫文などもそう。 2022/01/12

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