内容説明
古代ギリシアまで遡る Why be moral? 問題は、「プリチャードのジレンマ」の定式化以降、擬似問題であるとの批判や自己利益・人生の意味に基礎づける様々な解釈が提起され、日本でも論争となった。本書は道徳的であるべき理由をめぐる倫理学上の立場を検討し、実践理性の観点を擁護。実践的かつ常識的真理を疑う難問への招待。
目次
はしがき
凡 例
序 「なぜ道徳的であるべきか」を問う意義
序・1 実践的問題と哲学的問題
序・2 本書の目的と概略
第I部 Why be moral?問題とは何か
第1章 問題設定の難しさ
1・1 最低限の了解と問題提起
1・2 Why be moral?問題が抱えるジレンマ
1・3 本書の主張とそれを支持するための論証
1・4 Why be moral?問題小史
コラムA ギュゲスの指輪とインターネット
第II部 Why be moral?問題の前提を問い直す
第2章 道徳的でなくてもよいという立場
2・1 フットの「仮言命法の体系としての道徳」
2・2 フットがとらなかった選択肢
第3章 道徳的であるべきだが,道徳的であるべき理由は存在しないという立場
3・1 プリチャードの「道徳哲学は誤りに基づいているか」
3・2 初期のよい理由アプローチ
3・3 ジレンマをどのように解消すべきか
コラムB なぜ法に従うべきか(遵法義務の問題)
第III部 自己利益の観点からの理由
第4章 ホッブズ主義
4・1 なぜ我々は道徳的であるべきか:バイアーの答え
4・2 なぜ私は道徳的であるべきか:ゴティエの答え
4・3 機械道徳への実装化の試み
4・4 ホッブズ主義の答えの検討
第5章 道徳と自己利益の調停
5・1 実践理性の二元性
5・2 経験的な調停
5・3 概念的な調停
5・4 潜在的な調停
5・5 ホッブズ主義との比較
コラムC Why be moral?問題とフェミニスト倫理学
現在地点の確認:プリチャードのジレンマをどう解釈すべきか
第IV部 実践理性の観点からの理由
第6章 人生の意味
6・1 シンガーのアイデア
6・2 人生の意味をどう考えるか
6・3 実践理性とは何か
第7章 他者の利益
7・1 規範的実在論(実質的実在論)
第8章 自 律
8・1 コースガードの実践的アイデンティティ
8・2 ダーウォルの自律的内在主義
8・3 ダーウォルの二人称的観点
8・4 手続き的実在論の採用
第9章 実践理性それ自体
9・1 晩年のフットの議論
9・2 どのようにして実践的合理性を統合するか
第10章 道徳的であるべき理由としての実践理性
10・1 利己主義の問題
10・2 実践理性の観点に対するコップの懐疑論
10・3 反論に答える
本書の結論
コラムD 中国哲学におけるWhy be moral?問題
補 章 日本でのWhy be moral?論争
補・1 大庭健の見解
補・2 永井均の見解
補・3 安彦一恵の見解
補・4 本書の議論の含意
参考文献一覧
あとがき
索 引