内容説明
江戸末期に土佐に生まれ、幼少より絵の才能を発揮し、狩野派の技法を信じがたい短期間で習得した天才絵師、絵金。江戸で絵を学んで故郷に戻り、土佐藩家老のお抱え絵師となるも、とある事件により追放される……。狩野派を学びながらも独自の美を追究した絵金は、血みどろの芝居絵など見る者を妖しく魅了する作品を描いた。その絵に魅入られ、人生を左右された男たちの生きざまから、絵金のおそるべき芸術の力と、底知れぬ人物像が浮かび上がる、傑作時代小説。
目次
序
一章 岩戸踊り
二章 絵金と画鬼
三章 人斬りの目覚め
四章 末期の舞台
五章 獄中絵
六章 絵金と小龍
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カムイ
45
絵金さんですか、高知を旅した時に何度か目にした浮世絵で残虐な絵だなと思ったカムイである、作者もそこに目を着けたのは納得してます、各章に絵金に見せられた人物の物語、登場人物たちの凋落には絵には闇を纏った閻魔が覗き見曳きずり込んでいくのである2024/05/26
シキモリ
25
幕末を生きた天才絵師・弘瀬金蔵、通称<絵金>。その絵に魅入られた土佐の名士達の生涯を描き出す連作短編集。絵金に関する知識が皆無なので、ネットで作品を検索してみたところ、蝋燭の火に照らされた鮮烈な赤色が目に残る。絵の魔力に囚われ、夢と現実が交錯していく物語は「人魚ノ肉」にも近しい質感。狩野派からの離脱、歌舞伎役者との邂逅を経て、尊王攘夷の起爆剤となる絵金の作品。芸術は時代の写し鏡という言葉を借りると、最終章の幕引きが一層妖しく香る。しかし、絵画が題材の作品は実物を見ない限り、補完出来ない部分が多かったり…。2021/06/26
RASCAL
17
歴史的にはさほど有名ではない(失礼)幕末の異端の絵師・絵金が、大阪や土佐で、市川團十郎、武市半平太、岡田以蔵、歴史上の有名人物をその絵で翻弄する。こういうのって一つ間違うととんでも小説になるが、その辺の塩梅が絶妙、いかにも木下さんらしい歴史小説。2022/06/01
舟華
11
土佐の絵金こと広瀬金蔵の物語。様々な人間の目線で子供時代から亡き後まで描かれる物語。空間としての闇を着色する、人間の闇の部分を点す、惑わす、そんな絵を描くそんな人間であった。彼を嫌いで堪らない人でも彼の絵には結局のところ抗えない。赤という色を最大限に活かした絵師なんだろう。自分が実際に彼の絵を目の前にしたらどうなってしまうのか、と少し怖くなった。2021/11/20
茶幸才斎
7
幕末の異才の絵師、絵金とは何者だったか。土佐の豪商仁尾順蔵に見出され、江戸の前村洞和の下で狩野派の技法を極め、土佐藩家老桐間蔵人のお抱え絵師となるも贋作騒動で地位を失い、上方にて八代目市川團十郎の芝居看板を描き、武市半平太ら土佐勤王党の資金源として筆を握り、没後は河田小龍が彼の墓碑文を記した。闇の中、蝋燭の灯に浮かぶ血赤の滴る絵が、視る者を幻惑し生き方を狂わせる。絵金を追いかけたら噛みつかれる。それは、ネットの情報に魅入られ、内面の心情を極端に単純なテキストに変え止め処なく生成し続ける我々への警鐘かもね。2021/09/06
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