内容説明
「あなたは尊い存在である」――その、貫かれた「人間観」に迫る。
古くは『源氏物語』から宮沢賢治まで、日本人を魅了し続けてきた法華経。「諸経の王」と呼ばれる経典には、いったい何が書かれているのか。法華経が説く「一仏乗の教え」とは何なのか。仏教の原点に還ることを説く経典に内蔵された、ブッダがほんとうに伝えたかったこととは何か。仏教に立ちはだかった「対立」という壁を乗り越えて「平等思想」を説いた法華経は、「分断」がはびこる世界に「融和」という処方箋を提示する。サンスクリット原典から日本語訳を果たした第一人者が、宗教書にとどまらない「人間に寄り添う書物」として、その思想の本質を探る。
〈内容〉
はじめに:思想として『法華経』を読む
第1章:全てのいのちは平等である
第2章:真の自己に目覚めよ
第3章:「永遠のブッダ」が示すもの
第4章:「人間の尊厳」への讃歌
特別章:対立と分断から融和へ
読書案内
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
esop
59
法華経は諸経の王/小乗と大乗の対立をアウフヘーベンする、つまり対立を対立のままで終わらせず、両者を融合させてすべてを救うことを主張するお経0法華経/『法華経』に一貫しているのは「原始仏教の原点に還れ」という主張/自らをたよりとして、他人をたよりとせず、法をよりどころとして、他のものによることなかれ/仏教は、人間を原点に見すえて、人間を〝真の自己〟(人)と法に目覚めさせる人間主義/法華経は、あなたもブッダになれます.あなたは貴い存在ですと人々に訴え、失われた自己を回復させ、〝真の自己〟に目覚めさせる経典です2024/09/27
❁Lei❁
20
宮沢賢治研究のため『法華経』の基本を学びたく読了。『法華経』が誕生するまでの仏教の変遷、経典の章ごとのエッセンス、全体を概観して分かる平等思想などが簡潔明瞭に解説されていました。人種や性別云々以前にみな平等に同じ人間なので自他を軽んじないことが大切という、信仰に関係なく人として重要な倫理観が経典中で説かれています。国内外で未だに争いの絶えない現代にこそ必要な思想ではないかとすっかり感化されました。「平等」をキーワードに研究を進めたいと思います。2022/04/27
みなみ
8
ミッション系の学校だったのでキリスト教は教えてもらった。一番知らないのは仏教だと気づいて、とりあえず100分de名著から見繕って何冊か読んでみることにした。そのうちの1冊。法華経がなぜ生まれたか、どういう教えなのか。仏教は歴史ででてくるとだいたい既得権益側になっている。しかし本質はこんなにも人間個人を尊重するものなのか。そしてインドのバラモン教が根付いた中で平等を説く難しさを感じる。教えとは、普遍的でもあり、その土地を反映するものでもある。Kindleアンリミテッド。2024/12/22
Hatann
8
大乗仏教の教えのひとつである『法華経』を語る。当時の 小乗仏教の差別思想(出家者のみ阿羅漢になれる)を否定して原始仏教の教えに還れと主張した。同時に、初期大乗の差別思想(出家者は菩薩になれない)も三乗が一仏乗を導く方便だとして克服する。そして、様々な譬話を通じて失われていた真の自己を回復しうることを示して、他者の存在の重さの自覚に導いた。別世界でブッダとなれるのに現実社会にとどまり言葉を通じて利他行を貫くことが大切とし、釈尊を別世界にいる絶対者ではなく、遥か昔に成仏していたものと説いた(久遠実成)。成程。2023/01/23
りっとう ゆき
7
釈迦入滅後、ストゥーパ信仰とか財力により自分だけが涅槃を目指すといったずれた仏教が力を持つように。一方これに対して法華経や維摩経で説かれているような大乗仏教が興った、で、法華経は、それまでの仏教と大乗仏教とをアウフヘーベンしつつ、釈迦の時代の本来の教えに立ち返ろうというものだと。人類平等とか、人は誰も尊い、など。この背景には、バラモンの厳しいカースト制度があったと。100分名著の般若心経、維摩経って読んだあとだったので、わりと明確というかはっきりしてるという印象。また、当然ながら釈迦を中心に書かれている。2022/02/12