内容説明
さぁ、出かけよう! 「物語」という旅へ。
様変わりした生活、奪われる自由――。
でも大丈夫、私たちには「小説」がある。
国境、日常、現実を飛び越え、行き先は無限大!
宮内悠介、藤井太洋、小川哲、深緑野分、森晶麿、石川宗生――。
最旬の作家たちが想像の翼を広げて誘う、魅惑のノベル・ジャーニー!
宮内悠介 「国境の子」
対馬から韓国まではわずか一時間。でも「ぼく」にはそれが遠かった。
藤井太洋 「月の高さ」
旅公演スタッフとして遠征中、あの日見た月が胸に去来する。
小川 哲 「ちょっとした奇跡」
自転が止まった地球。カティサーク号は、昼を追いかけ移動を続ける。
深緑野分 「水星号は移動する」
移動式の宿・水星。今日はどんなお客様と出会うのだろう?
森 晶麿 「グレーテルの帰還」
あの夏、最後の家族旅行での惨劇が、私の運命を大きく変えた――。
石川宗生 「シャカシャカ」
地表が突然シャッフルをはじめた!? 姉弟の生き残りをかけた旅が始まる。
目次
宮内悠介 「国境の子」
藤井太洋 「月の高さ」
小川 哲 「ちょっとした奇跡」
深緑野分 「水星号は移動する」
森 晶麿 「グレーテルの帰還」
石川宗生 「シャカシャカ」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hiro
67
深緑さんの作品を読みたくて手に取った旅をテーマにしたアンソロジー。『国境の子』:海を挟んで50㎞程の距離なのに旅発つまで時間がかかった国境を越える旅。宮内さんらしさも感じた。『月の高さ』:舞台美術のベテランと新人女性スタッフの一晩かけて東京から弘前までのトラックでの旅。途中でトラブルが発生するが…。月の話がアクセント。『ちょっとした奇跡』:自転が止まった地球に生き残った人類は、決して合流することのない2隻の船で航海を続けている。そこで交換日記をしている若い二人の新しい切ない旅。以上前半の3編が良かった。2021/07/23
coolgang1957
54
「国境の子」出自なんて恐れ入ったかの一言で屈託なんか飛んじゃう😀「月の高さ」いつでもどこでも専門家は凄いんですよ🧐「ちょっとした奇跡」思いやりと希望はどんな時も必要さ🤨「水星号は移動する」若者は旅で答えを見つけ出すんだ🤔「グレーテルの帰還」ガースーの話法をディスる千夜一夜物語、〝金平糖の踊り〟をBGMにして……😅「シャカシャカ」混沌ってこのことかぁシェーカーに入れられた世界😞/小川哲さんはさすがSFの天才、森さんの(グレーテルの…)がお気に入り😄2021/08/23
ひさか
36
小説現代2021年2月号国境の子:宮内悠介、月の高さ:藤井太洋、2月号ちょっとした奇跡:小川哲、水星号は移動する:深緑野分、3月号グレーテルの帰還:森晶麿、4月号シャカシャカ:石川宗生、の旅をテーマにした6つのSF短編を2021年6月講談社から刊行。藤井さんのプロの気概と感性を描いた話が楽しい。小川さんの地球の自転が止まった昼夜の境を航行する船の世界が興味深く、そこでの人々の暮らしが面白い。もう一つの船の存在にインパクトがあり、心に残ります。石川さんのシャカシャカはタイトルが素敵で楽しいです。2021/08/16
うまる
34
SF寄りの旬な作家6名による旅物語。ほぼお初の作家さんなので、先入観なく自由な旅を楽しめました。一番好きなのは、小川哲さんの『ちょっとした奇跡』人類の終わりが見えている中で、ある話に絡めた奇跡が起きる、せつないけど心に残る話でした。2つの船という設定とその生活の描写が良く出来ていて、内容が凝縮された良質な短編です。展開の妙が光るのは、森晶麿さんの『グレーテルの帰還』冒頭への繋がり方になるほどと唸りました。現実ネタを入れたリアルさが面白いしタイトルも素晴らしい。父親の政治話法がめっちゃむかついた(褒め言葉)2021/09/04
星群
30
初読み作家さん6人中4人でした。この中で、一番平和な旅でした。/台湾の高い月を見に行きたい。/切ない一瞬、こうなって欲しくない未来。/泊まってみたい水星号、予約しなきゃ、だ!/怖すぎる帰還、あまりにもお婆さんが可哀想。/自由過ぎて不思議な世界。/気楽に思うままに出かけられない今、「想像見聞録」に魅了された。2021/08/09