ちくまプリマー新書<br> 壊れた脳と生きる ――高次脳機能障害「名もなき苦しみ」の理解と支援

個数:1
紙書籍版価格
¥1,012
  • 電子書籍
  • Reader

ちくまプリマー新書
壊れた脳と生きる ――高次脳機能障害「名もなき苦しみ」の理解と支援

  • ISBN:9784480684028

ファイル: /

内容説明

41歳で脳梗塞を発症し、高次脳機能障害が残った大介さん。何に不自由なのか見えにくい障害は、援助職さんにも十分に理解されていない。どうしたら当事者さんの苦しみを受け止め、前に進む支援ができるのか。専門医であるきょう子先生と、とことん考え抜きます。

目次

はじめに 支援職と当事者の歩み寄りを求めて=鈴木大介
第1章 人生を左右するお困りごと
「心の苦しさ」という迷宮
言葉の障害
最大の「苦しさ」は何か?
脳のキャパシティ問題
嫌な記憶ほど引き がせない
ひとつの入力にひとつの出力
できないことも、全肯定してください!
理解のなさへの絶望
発語の困難さ
障害って何?
記憶のモンダイ
「去年に比べればいい」と考える
心の中のキャパシティ
「分かっていてもコントロールできない」のが苦しい
その人との「チューニング」がコミュニケーションの肝
これだけは言ってくれるな!!
時間と回復
なぜ情動を制御できないのか
情動の暴走への対処法
これができたら自信になる!
高次脳機能障害は一言では表現できない
第2章 名もなき苦しみに、名前をください!
高次脳機能障害からの回復はリノベーション
刺激のシャワーに耐えられない!
会話のダイナミズム
「自分勝手」レッテルの誤解
マニュアルのない治療
脳のスペックが落ちる
元のパーソナリティが強まる傾向
障害の個性がはっきりしてくる
「現実感がない」ホラー状態
「左側に嫌なものがいる」
失語症と談話障害の違い
言葉の理解のオンラインが途切れる
破局反応
心理・感情の問題
「山菜採りのプロ」とは
「依存」って何?
相手の「苦しい」にとにかく気づいて!
脳の8割が高次脳機能に関わる
第3章 自己理解の支え
「自分は病気だ」と気づいているかどうか
「障害」って、どんな状態?──患者の立場と医療者の立場
「できる」の基準を変える
「大丈夫」の意味
病気を認めるかどうか、リハビリがうまくいくかどうか
神経心理学的検査の意味
復帰後のフォローアップ──理想と現実
目標をどこに設定するか
苦しさを軽減するための工夫──環境調整
自分の中のパラダイムシフトをどう起こすか
家族の心構えも環境の一つ
「中の人」は変わらない!
高次脳機能障害の当事者同士の集まり
仕事への復帰あれこれ
第4章 あなたの隣の当事者さん──支援の仕方を考えよう
「ちょっと変」「なんか変」に気づいてあげる
病前記憶、病前習慣
障害の受容
「障害者」アレルギー?
自己理解の入り口
「病前」を考慮するという大前提
お困りごとの洗い出し
「できない」ことをどう知るか
カミングアウトをどうするか
病後の人間関係・悲喜こもごも
安全基地をつくる
認知症も似ている
病後だからこその人生観
有限性を知る
脳は壊れても人生は続く
「積極的に人に頼る」という戦略
支援者の支援
「生きやすさ」のためのワンチーム
当事者を代表してのお願い──対談を終えて=鈴木大介
おわりに 「個性」に合わせた支援をめざして=鈴木匡子
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アキ

96
41歳で脳梗塞による高次脳機能障害が後遺した著者と、東北大学医学部高次機能障害学教授との対談を通じて、自らの病への認識の修正に加え、未だ診断されていない病者がいると警鐘を鳴らしている。脳障害のうちほぼ8割は高次脳機能に関係している。日本では交通外傷による高次脳機能障害が認知された経緯があり、後遺症判定の発症半年を過ぎて、社会に復帰して初めて気づかれることがある多彩な症状のため、対処方法が一様でないことなど課題が山積みの状態である。当事者である著者によるこの障害の社会への認識を広げる取り組みは素晴らしい。2021/07/07

Aya Murakami

93
図書館本 発達障害(しかも成人して10年以上たって診断?された)なので壊れた脳の生きづらさは何となくわかる…気がする…。理由はないのになぜか周りが普通にできることができなくて叱責を買うのですよね。高次脳機能障害はそんな発達障害に似た症状だと説明されています。作者さんが言うように日常生活はトラップだらけです。そして脳機能に低次やら高次やらあるのか…。脳の世界も複雑だ…。 コミュニケーション能力が高い人よりもコミュニケーション能力が低い人とのやり取りが簡単。この辺も分かるようなわからないような?2022/04/02

kuchen

9
高次脳機能障害の当事者と専門医の対談。当事者の語る症状に専門医が傾聴しつつ、読者にも分かりやすい説明を行い、高次脳機能障害の理解を促す。社会的な認知度が低い障害だか、当事者や家族の辛さや苦しみはいかばかりだろう。この症状の認識が広がり、周囲の無理解が減り、当事者が生活しやすい社会になってほしい。2024/03/16

NBかえる同盟

9
積読消化。大介氏の以前の単著は「ああ俺も」と大いに共感し面白く読んだのだが、本書は専門家との対談形式で、そのうえ支援職やそれを目指す学生をターゲットにした本のよう。大介氏の愚痴のような意見の数々を、きょう子先生は柔らかく受容するか新しい視点を示すか…で、面白おかしい内容にはならず、一時積読に。落ち着いてゆっくり読めば勇気づけられる言葉の多い良い本だ。本書中にある『すごく大変な状態はずっと続くことはないはず!』という言葉を胸に刻み、明日もまた生きるぞ。2022/12/29

治野

6
医療従事者向けとは言いつつ、一般の人もわかる内容。誰もが当事者になりうるし、最後にさらっと書かれていた認知症も広義の高次脳機能障害という視点は目から鱗だった。2021/07/02

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/17979624
  • ご注意事項