ちくま新書<br> 疫病の精神史 ――ユダヤ・キリスト教の穢れと救い

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ちくま新書
疫病の精神史 ――ユダヤ・キリスト教の穢れと救い

  • 著者名:竹下節子【著】
  • 価格 ¥770(本体¥700)
  • 筑摩書房(2021/06発売)
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  • ISBN:9784480074065

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内容説明

ペスト、赤痢、コレラ、スペイン風邪、新型コロナ――、古代から現代まで、人類は疫病とどのように向き合ってきたのか。律法により衛生管理を徹底し「穢れ」を排除したユダヤ教と、病者に寄り添い「魂の救い」の必要性を説いたキリスト教。二つの価値観が対立しつつ融合し、やがて西欧近代という大きな流れへと発展してゆく。聖書に描かれた病者たち、中世の聖者や王が施す治療、神なき現代社会で「健康」を消費する現代医学。疫病に翻弄される世界の歴史を描き、精神の変遷を追う。

目次

はじめに──いま、宗教の役割とは何か
序章 新型コロナとキリスト教
赦しの秘跡
犠牲の仔羊
命と健康
キリスト教とコロナ禍
「病」と「病者」
第1章 疫病は聖書でどう描かれたか
ギリシャ神話と癒し
イエスと使徒たち
旧約聖書と疫病
病の診断と対処法
預言者による治療
戒律から慈善へ
痛めつけられるヨブ
治療するメシア
「救い」の変遷
疫病と世界の終わり
終末論と罪悪感
崩壊学と環境破壊
「感染する」終末論
第2章 キリスト教と医療の伝統
キリスト教共同体と救いの伝統
ホスピタルのはじまり
ホスピタル修道会
病者に寄り添う聖ルイ
神のヨハネス
慈しみの世紀
啓蒙の世紀以降の疫病
民間療法を取り入れたパラケルスス
医療の刷新と抵抗
パラケルススと秘儀
ビンゲンのヒルデガルト
万物と人間
ビールなどの修道院製品への注目
第3章 疫病と戦う聖人たち
ガレノス医学の継承とヨーロッパ
修道院と自然の秘密
疫病の拡大
ペストへの対策
伝染病と聖人たち
癩者への接吻
不可能の治療師、聖ロック
カトリック改革以降のペストと聖人
ハンセン病と聖人
ハワイのハンセン病
殉教者の傷
聖像による疫病封じ
第4章 イエスは手を洗ったのか──「清め」と衛生観念
穢れと隔離
皮膚病と公衆衛生
ファリサイ派と律法
律法学者たちによる「抜き打ち調査」
手洗いのシンボリズム
イエスの見解
普遍宗教の誕生
ユダヤ教とキリスト教の清め
禁欲行の始まり
「閉じ込められる」ことの流行
罪の女タイスの悲惨な贖罪
衛生と聖性
ブノワ・ラーブルの「洗わない」誓い
落伍者の守護聖人
ワクチンの発明
「奇跡の治癒」の複雑化
生きる意味を模索する
第5章 疫病に翻弄された西洋──ペスト・赤痢・コレラ・スペイン風邪
ヨーロッパとオリエント
フィレンツェの経済対策
新政権による疫病対策
慈しみのマドンナ
八聖人戦争──フィレンツェvsローマ教皇
下級労働者たちの反乱
フランス王の聖性と感染症治療
王権神授説と国王による癒し
按手と政治
ルイ十四世の医療改革
エルヴェティウスの治療薬
王立医学会の誕生
ルイ王朝と赤痢
医療政策の限界
革命と医療
政治とコレラ
生き続ける「神頼み」
奇跡のメダル
一九世紀末以降のコレラ
グローバル化する疫病
スペイン風邪と新型コロナ
終章 医学か宗教か
永遠の命
羊飼いとキリスト教
牧者パスツールの思想
悪の形相に欠けたコロナウイルス
ウイルスと魔女狩り
神の居場所
肉体と精神の関係
おわりに──思考停止に陥らないために
シャルル・ペギーと神の言葉
ルナンの真珠貝
「健康の革命」
信頼と共に
あとがき
主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

61
西欧というよりキリスト教が疫病にどのような態度で臨んでいたかを論じた一冊。治癒神としてのイエスは以前別の本で読んだ記憶があるが、本書ではその面が根源にあるキリスト教とユダヤ教との違いから始まり、医療の伝統に衛生観念、中世西洋を襲ったペスト等の疫病、そして現在のコロナと歴史に沿ってその変化を説いている。イエスと手洗いとかフランス国王が按手によって病人を癒そうとした等、歴史にはなかなか書かれていない知識も多くその点では読んでいて面白い。キリスト教を持ち上げすぎな部分も散見されるが、総じて興味深い一冊であった。2021/07/27

bapaksejahtera

13
古代から現代、人類は疫病に如何に対処したか。カトリックの視点でイエスの言等聖書の記述、列聖された人々等様々を採り上げ、次いで近代医学の萌芽と進展が基督教社会に与えた影響、最後に今次のコロナへの欧州社会の反応を評価して終わる。キリスト教カバリズム、医学胎動期のパラケルスス、カトリック界の思想の変動等、キリスト教へのシンパシーにのない私の様な読者にも、著者の重厚な記述は理解を進める。慈悲、利他と言いつつ、疫病対処というと大きな活動展開のない今日の仏教に比べ、基督教の美質も分からぬではないが、やはり馴染めない。2022/04/22

遊未

7
東京で連日2万人近い感染者が出ている今、気になってしまうのが手洗い。ユダヤ教の形骸化し偽善的な「食事前の手洗い」をイエスは「手を洗わずに食事をしてもその人を穢れたものにしない。」と。水が豊富でない世界だしそれは正しい。しかし、衛生上は?信仰なくとも神社やお寺で参拝前に手を洗うし、食事前、大事な物に触れる前に手を洗う日本の日常に救われているかもしれません。2022/02/11

てくてく

5
飢饉や疫病は神罰というイメージで語られてきたにもかかわらず、今回のコロナ感染拡大についてはどのような言説はキリスト教側からは見なかった様な気がしていたが、そのあたりの裏付けとなるような、病の癒しがキリスト教において重要な要素になっていることを知ることができて面白かった。2022/12/31

dogufs

1
疫病を罪、医療を教会、ワクチン接種を聖体拝領や告解と重ね合わせて論じる視点は面白かったが、1つのテーマを深く掘り下げるのではなく、ユダヤ・カトリック文化圏の歴史的トリビアの羅列のような構成にしか読めなかったのがちょっと残念。 しかし、「終わりに」を含む最後の2つの章はぐっと来た。2023/08/14

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