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内容説明
明治政府の神道国教化により起こった廃仏毀釈。それは、日本で長らく共存していた神道と仏教を分離し、仏教を排斥する運動だった。この出来事は寺院や仏像の破壊など民衆の熱狂による蛮行というイメージが流布しているが、実際にはどんなものだったのか? 信仰の対象であったものを破壊するのに、人々にためらいはなかったのか? 神仏が共存していた時代から説き起こし、各地の記録から丁寧にこの出来事の実際を読みとく。
目次
はじめに──何を「判然」とさせたかったのか?
「廃仏毀釈」のイメージ
「習合」という言葉
「判然令」の意味
本書の構成
序章 神仏が共存していた時代
1 「神仏習合」の成立
神と仏が出会う
神が仏に従う「三つの考えかた」
神宮寺の隆盛
東大寺大仏と八幡神
神像彫刻の発生
2 習合が進んだ中世
「習合」の論理
本地垂迹と権現
山岳信仰と修験道
神仏が習合した山々
八幡信仰──石清水と鎌倉
古社における神仏習合
牛頭天王と祇園社
3 各地の神宮寺
諏訪の神宮寺
三輪と住吉
宮中・御所
4 近世庶民信仰の多様さ
民衆に浸透する近世仏教
霊場参拝の流行
第一章 毀釈の典型──日吉・薩摩・隠岐ほか
1 廃仏毀釈はいつ始まったのか
近世に発生していた神仏分離
水戸藩の神仏分離政策
戊辰(慶応四)年の太政官布告
2 〈先駆〉としての日吉社
近代最初の廃仏毀釈
「容赦もなく灰燼に」
破壊への戒告
3 薩摩藩における徹底的破却
分離令布告以前の廃仏活動
大寺院の「処分」
門徒が守った仏像
神仏習合の終焉
4 隠岐──離島独自の事情
隠岐騒動と廃仏運動
小野篁造仏伝承
大阪に残る「あごなし地蔵伝説」
5 松本藩と苗木藩
藩知事が推進
苗木藩の「名号塔伝説」
第二章 古都の惨状──奈良・京都・鎌倉
1 奈良──南都仏教の凋落
古社寺は近代化されている
興福寺五重塔をめぐる「伝承」
東大寺鎮守八幡の分離
聖林寺十一面観音伝説
妙楽寺から談山神社へ
幻の大寺・内山永久寺
貴重な寺宝の流失
2 京都──千年の都における習合の分離
石清水八幡宮の大転換
北野天神の仏教色排除
上賀茂・下鴨神社の神宮寺廃絶
3 宮中の「神道化」
皇室から仏教色を取り除く
泉涌寺の扱い
4 鎌倉──八幡宮の膝元で
鶴岡八幡宮寺の仏教色排除
様変わりした霊場江の島
第三章 聖地の変貌──伊勢・諏訪・住吉・四国
1 伊勢──「神都」成立の経緯
古社寺における神仏習合
伊勢における府知事の横暴
「お蔭参り」を演出した御師も消えた
2 諏訪──御本地・御神体の現在
諏訪神宮寺破却の 末
「社人」の活躍
修復された御本地
目のない仏像
3 住吉──痕跡なき大寺
四国に移築された大塔
現存する堂塔
4 四国──遍路札所の神仏分離
神社が含まれていた「八十八ヶ所」
廃寺になった札所
寺領没収と離檀の悲惨
ひとつの境内にふたつの札所
第四章 「権現」の消滅──吉野・出羽三山・金毘羅ほか
1 「権現」のゆくえ
「蔵王」と蔵王権現
吉野蔵王堂の廃寺と再興
「おんたけ」と「みたけ」の権現
石鎚権現だったふたつの寺院
2 山岳信仰の跡形
出羽三山神社に建つ「五重塔」
宮司による廃仏推進
出羽三山その後
東日本の霊山──戸隠・立山・白山
江戸近郊の霊山──富士山・箱根・伊豆・大山
神社となった「吉野山」
3 「こんぴらさん」の神社化
金刀比羅宮と松尾寺
金毘羅大権現をめぐる訴訟
神仏習合の一典型
第五章 「天王」の隠蔽──八王子・祇園・大和ほか
1 「天王山」と「八王子」
日本各地にあった「天王社」
天下分け目の地
「八王子」という地名
2 天王信仰根拠地の神社化
京都祇園社の祭神変更
広峯社の盛衰
津島天王社神宮寺の廃絶
3 摂津と大和の天王信仰
牛頭天王と熊野権現を合祀
密集していた「天王社」
4 牛頭天王と天皇と疫病
「天王」と「天皇」
近代に起こった「天皇」祭神化
疫病除けの信仰
順調にみえる毀釈
終章 廃仏毀釈は果たされたのか?
1 それでも仏像は残った
棄教した僧侶、仏像を守った民衆
神仏習合をとどめた場所
海を渡った神宮寺本尊
伊勢妙見信仰の遺産
男山八幡宮寺と内山永久寺の宝物離散
鶴岡八幡宮寺から流失した優品
霊峰からの下山仏
〝再発見〟される神仏習合
2 民衆は廃仏にどこまで積極的だったのか
回復できなかった〝ねじれ〟
神仏分離・廃仏毀釈の文化的景観
廃仏伝承を超えて
民衆は「暴挙」に手を貸したのか?
あとがき
参考・引用文献一覧
感想・レビュー
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六点
さとうしん
かみかみ