岩波文庫<br> 都市と農村

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岩波文庫
都市と農村

  • 著者名:柳田国男
  • 価格 ¥924(本体¥840)
  • 岩波書店(2021/06発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784003812211

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内容説明

昭和初期の小作争議が頻発した時代,農政官として出発した柳田は,農村の疲弊と農民の貧困を,農村内部の問題としてではなく,都市との関係でとらえた.田舎から都市への人の流入を歴史的にたどり,文化全体をみつめるなかで,具体的な希望として農民による協同組合運営を提言.現代においても示唆に富む一書.(解説=赤坂憲雄)

目次

自序┴第一章 都市成長と農民┴一 日本と外国との差┴二 イナカと田舎┴三 都とその他の都市┴四 城下町の支持者┴五 村の市と町の常見世┴六 町人の故郷も村┴七 土を離れた消費者心理┴八 宿駅生活の変化┴九 愛郷心と異人種観┴一〇 農村から観た都市問題┴第二章 農村衰微の実相┴一 村と村との比較から┴二 生活程度の高下┴三 物議と批判力┴四 一人貧乏と総貧乏┴五 農だけでは食えなくなる┴六 不自然なる純農化┴七 外部資本の征服┴八 農業保護と農村保護┴九 生計と生産┴一〇 人口に関する粗雑な考え方┴第三章 文化の中央集権┴一 政治家の誤解┴二 都市文芸の専制┴三 帰化文明の威力┴四 そそのかされる貿易┴五 中央市場の承認┴六 無用の穀価統一┴七 資本力の間接の圧迫┴八 経済自治の不振┴九 地方交通を犠牲とした┴一〇 小都市の屈従摸倣┴第四章 町風・田舎風┴一 町風の農村観察┴二 田園都市と郊外生活┴三 生活様式の分立┴四 民族信仰と政治勢力┴五 自分の力に心付かぬ風┴六 京童の成長┴七 語る人と黙する人と┴八 古風なる労働観┴九 女性の農業趣味┴一〇 村独得の三つの経験┴第五章 農民離村の歴史┴一 都市を世間と考えた人々┴二 商人の根原┴三 職人の都市に集まる傾向┴四 武士離村の影響┴五 長屋住居の行掛り┴六 冬場奉公人の起り┴七 越後伝吉式移民┴八 半代出稼の悲哀┴九 紹介せられざる労働┴一〇 住所移転の自由不自由┴第六章 水呑百姓の増加┴一 分家は近代農村の慣習┴二 家の愛から子の愛へ┴三 下人は家の子┴四 年季奉公の流行┴五 いわゆる温情主義の基礎┴六 地主手作の縮小┴七 農作業の繁閑調節┴八 大田植の光景┴九 多くの貧民を要した大農┴一〇 親方制度の崩壊┴第七章 小作問題の前途┴一 地租条例による小農の分裂┴二 小作料と年貢米┴三 たった一つの小作人の弱味┴四 耕作権の先決問題┴五 土地財産化の防止策┴六 地主の黄金時代┴七 地価論に降参する人々┴八 土地相場の将来┴九 挙国一致の誤謬┴一〇 農民組合の悩み┴第八章 指導せられざる組合心┴一 二種の団結方法┴二 組合と生活改良┴三 産業組合の個人主義┴四 農民組合の個人主義┴五 組合は要するに手段┴六 農民の孤立を便とする階級┴七 前代の共同生産┴八 山川藪沢の利┴九 土地の公共管理┴一〇 地租委譲の意義┴第九章 自治教育の欠陥とその補充┴一 村を客観し得る人┴二 保護政策の無効┴三 都市の常識による批判┴四 人量り田の伝説┴五 村統一力の根柢┴六 平和の百姓一揆┴七 利用せらるる多数┴八 古風なる人心収攬術┴九 自尊心と教育┴一〇 伝統に代る実験┴第一〇章 予言よりも計画┴一 三つの希望┴二 土地利用方法の改革┴三 畠地と新種職業┴四 中間業者の過剰┴五 不必要なる商業┴六 消費自主の必要┴七 都市失業の一大原因┴八 地方の生産計画┴九 都市を造る力┴一〇 未来の都市の本務┴解説 失われた共産制の影を探して(赤坂憲雄)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

109
最近岩波文庫に柳田の著作が少しづつ納められています。この著作もその最新版ですが、書かれた当時のことが現在にも当てはまるような状況になっていてタイミング的にはぴったりでした。柳田がこの著作を書いた当時は農政官ということで各地の農村を廻っていたということで、フィールドワーク的な感じもします。当時農業は一番の産業であったことにもかかわらず、その従事している人々の格差が大きかったことも書かれています。「文化の中央集権」「農民離村の歴史」など現在の状況を見るかのようです。2017/12/14

うえぽん

49
昭和4年に市民講座のため書き下ろされた著作。農村衰微の時代に都市と農村の関係性を説いた。農民の移転の自由は実際には存在し、村が都人の血の水上でありつつ、都は多くの田舎人の心の故郷という連続性は、中国や西洋の隔絶された都市空間とは異なるとする。農民組合は地価下落を予想して自作農創設に反対したが、入会等による土地の共同管理の歴史に鑑み、労力の配置調整や地権の財産化防止のため、良心ある農民組合の発展に期待していた。国との親密度を巡り互いに敵対してきた都市が、分権により周辺部を含めて連携し合うとの予測も興味深い。2024/12/28

roughfractus02

12
関東大震災後江戸の街並みが崩壊し、西洋的な都市化で農産物の自給が激減し、人とモノの流通が都市に集中すると同時に農村の荒廃が拡大する昭和初期、著者は都市と農村を対立的に捉えるマルクス主義者の主張を念頭に、都市周辺に増加する中都市(郊外)や田園都市(田園調布や新しき村計画等)がさらに都市化を拡大しつつある動向を注視する。本書は当時の農政や法を検討し、新たな社会観として農村に共同所有の考えに基づく協同組合の設置を促す。また、農閑期に出稼ぎせずとも良い地方での小工業を奨励すると共に自立的な農村教育も提案している。2025/02/23

うえ

10
「私の想像では、衣食住の材料を自分の手で作らぬということ、すなわち土の生産から離れたという心細さが、人をにわかに不安にもまた鋭敏にもしたのではないかと思う」「本当はこのように肥料を莫大に要求する国の方が珍しいのである」「現在の共産思想の討究不足、無茶で人ばかり苦しめてしかも実現の不可能であることを、主張するだけならばどれほど勇敢であってもよいが、そのためにこの国民が久遠の歳月にわたって、村で互いに助けて辛うじて活きて来た事実までを、ウソだと言わんと欲する態度を示すことは、良心も同情もない話である」2017/11/13

しゅう

4
農地改革による自作農への変化が、農村社会を大きく変えてしまったことを強く実感する。各農民が土地を持つことにより、農地は財産としての価値を持ち、土地と生業の間にあった関係が切り離されてしまった。 山野河海の入会利用は農村の大きな特徴であったが、それも解体された。都市と同じ価値観のもとに農村社会も扱われたことで、様々な矛盾が生じているのだと思う。 民主化されたいまの日本で、柳田のいう「固有の共産制度」の価値を見直し、いかにして地域で実践することができるか。ますます重要なテーマになると感じた。2023/02/05

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