内容説明
デジタル環境の変化に伴い,私たちの個人情報は自分の知らないうちにビッグデータとして利用され,ときに安全や効率をもたらし,ときにリスクをも生み出す.個人が尊重される社会を実現するため必要となるのは,人格形成や民主主義にも関わる重要な問題として,権利としてのプライバシーを問いなおすことだ.
目次
はしがき┴第1章 プライバシーはなぜ守られるべきか┴1 ケンブリッジ・アナリティカ事件の衝撃┴2 プライバシーとは何か┴3 プライバシー権を考える視座┴第2章 進化するプライバシーの権利┴1 プライバシー権の来歴┴2 プライバシー権の理論構成┴3 プライバシー権の発展┴第3章 個人情報保護法の新時代┴1 破産者マップ事件┴2 個人情報保護法の概要┴3 個人情報保護法の現況┴4 個人情報保護法の課題┴第4章 プライバシー保護法制の国際動向┴1 グローバルの中の日本┴2 米欧のデータ戦争┴3 自由と尊厳の衝突┴4 国境とプライバシー権┴第5章 プライバシー権をめぐる新たな課題┴1 監視とプライバシー権┴2 身体とプライバシー権┴3 プライバシー権をめぐる諸政策┴注┴あとがき┴参考文献一覧
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
68
プライバシーという概念自体が、日本ではまだとても若い権利なのだという実感が私の世代にはある。なので事件化した事例や海外の事例を引用するだけでなく、生活に即した「自分事」と思える例を挙げてくださったほうがよりわかりやすくなると思った。2021/03/08
ネギっ子gen
34
本書は、<プライバシー権をもっぱら規範的に抽象的に論じることを避けることとしています。実際、1世紀以上にわたるプライバシー権論争が決着をみないのは、現実の問題を離れてプライバシー権をただ美しい言葉で規範的に定義づけすることばかりに傾注してきたからだと指摘されてきました。そこで、プライバシー権の規範的意義を自覚しつつも、国内外の立法や判例の動向を丁寧にフォローし、できる限り実証的にプライバシーの権利の法的性格を明らかにすることを心掛け>た新書。その意気は買うが、読了後の感想――。プライバシー権は闇だね……⇒2021/04/19
壱萬弐仟縁
31
本書は高校の政経の問題や、ユーチューバーとなって個人を特定されるのが嫌な気分になるため、借りてみた。ハンナ・アレントは、プライバシーというシェルターに身ごもることの有害さを論じた。プライバシーは、もともと欠如しているという意味だとのこと(13頁)。何かが欠けている。だから、漏洩が起きたり、Twitter炎上で自殺にまで追い込まれてしまうのだろうか。著者は、プライバシーとは私秘性に関する多様な事象を指すという(18頁)。「宴の後」事件は、高校政経でも出てくる(33頁~)ので知ってはいたが、 2021/04/30
崩紫サロメ
21
本書は、現代日本におけるプライバシーを憲法13条「個人の尊重」に照らし合わせ、「自らの情報に関する決定の利権」こそが現代的プライバシー権の中核であるとする(p.20)。その源流がヨーロッパとアメリカにあるが、この両地域では様々な面でプライバシーに対する認識のあり方が異なっていることを指摘。例えば忘れられる権利など(p.133)また米中間で起こっている「データの国籍」問題(p.143)などは今後更に深刻な問題となるであろう。2021/03/29
C-biscuit
19
図書館の新刊コーナーで借りる。プライバシーと個人情報保護について、最新の情報が書かれている。本の中には一般人があまり知られていない情報漏洩事故もあったが、イギリスのEU離脱やトランプ大統領当選の選挙などFBの情報が結果にかなり影響した事件の模様。確かに人間はちょっと押されるとそちらの方向に流されやすい。SNSの活用も考えものである。自分自身が有名人でもなんでもないが、選挙などにも勝手に利用されるのはしゃくでもある。データを組み合わせることで浮かび上がる情報が、個人を特定させられる時代であることがわかった。2021/03/21