内容説明
R大学の史学科に教員として勤める小関は、大学内での処世術にも長けた同僚の折戸に、強い嫉妬心を抱いていた。
学問のうえでも差を付けられた小関だったが、ついに妻までもが折戸に奪われてしまう……。
大学内の派閥争いを軸に男女の愛憎を描いた、松本清張の傑作長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
りんだりん
15
山崎豊子さんの「白い巨塔」を思い出した。財前と里見の間柄を思わせる折戸と小関。折戸の不倫相手との精算に担ぎ出される小関。身勝手な折戸と、それを分かっていながら折戸の学問の才能の前に負け犬となってしまう小関は彼の言いなりに行動する。最後はやるせない結末でモヤモヤする。男女の愛憎と大学内の権力争い。時代設定は古いが今でも恐らく似たようなことが行われているのだろう。★32021/06/29
鉄人28号
14
☆☆ 東京の大学の国史科に所属する2人の助教授、折戸二郎と小関久雄、折戸は秀才で業績もある。鈍才と自認する小関は折戸の学才を尊敬している。折戸は高慢で自尊心が強く女にも手が早く品格に欠ける。風采が上がらず女にも奥手の小関を見下している風がある。にもかかわらず、小関の折戸に対する友情は厚く、理不尽な頼みにも応じる。その2人の関係が理解しがたい。この小説は殺人があるわけでもなく、また謎と言えるものもないのでミステリー性はない。しかし、社会派の松本清張ならではの作品である。2021/06/25
かすみ
11
推理小説ではありませんが、面白かったです。正反対の性格の二人の助教授の対比が、うまく書かれていました。2025/09/08
そうたそ
10
★★★☆☆ 同じ大学に勤める助教授同士ながら性格は正反対の小関と折戸。真面目ながら業績もなく風采の上がらない小関と、秀才型で女性にも人気の折戸。大学教授の登場する作品は清張ではお馴染みと言える。骨太な作品の多い清張の著作の中では、比較的に小粒な作品ではあるが、大学という組織の歪さ、男女の愛憎関係が描き込まれた良作。2025/06/28
グラスホッパー
8
まじめな小関と女好き折戸、対照的な2人だった。小関の生き方が清張自身を写し込んでいるようであった。2024/10/26