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内容説明
文豪たちが遺した異世界としての「山」。
東雅夫の選によるかつてないアンソロジー、文庫化。
近代の文豪から現代の人気作家まで。
数多くの作家が、深山幽谷を舞台とする神秘と怪異の物語を手がけてきた。
山を愛し読書を愛する人々にとって必読の名作佳品を集大成した史上初のアンソロジー。
収録作品:
火野葦平「千軒岳にて」
田中貢太郎「山の怪」
岡本綺堂「くろん坊」
宮沢賢治「河原坊」
本堂平四郎「虚空に嘲るもの 秋葉長光」
菊池寛「百鬼夜行」
村山槐多「鉄の童子」
平山蘆江「鈴鹿峠の雨」
泉鏡花「薬草取」
太宰治「魚服記」
中勘助「夢の日記から」
柳田國男「山人外伝資料」
編者解説(東雅夫)
文庫のためのあとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
69
人は山に惑う!文人は山に眩み、杣人は山を畏れる。さて、葦平・河童飛ぶファンタシー。貢太郎・狐狸の業?綺堂・人の驕りが…。賢治・清明なる幻視。平四郎・鉄の調伏。菊地・判別し難い文体。槐多・戯言。蘆江・道行の怪。鏡花・亡母への憧憬。大宰・「おめえ、なにしに生きでるば。」自問自答か!?勘助・夢幻の世界。柳田・山人と云い少数民族を考察す果ては縄文人を視たか、案外現代風に当時のホームレスやも?2021/07/04
たま
38
何気なく読み始めた選集だが、先日読んだ小松和彦『聖地と日本人』と繋がり面白かった。深い山を一人行くときの心許なさが怪談を生むとして、その背景には小松さんが描く山=霊場・異界という伝統的認識があるに違いない。雨月物語の白峯(崇徳院と西行)から説き起こす編者解説も、柳田国男「山人外伝資料」も参考になった。鏡花を初めとする11篇、いずれも面白いが、火野葦平、岡本綺堂の文章に驚き、村山槐多、中勘助のイメージに百閒を、太宰の津軽の山に石牟礼道子の熊本を思い、この分野に暗い私には興趣が尽きない。2021/10/28
HaruNuevo
6
ヤマケイ文庫は山怪シリーズが秀逸なので期待していたが、これは自分の趣味には合わなかった 図書館で借りた本だったけど、書店でパラパラ捲ってたら間違いなく買わなかったろう2022/08/08
くろばーちゃん
6
山を舞台にした、いろいろな作家の不思議な話が楽しめた。特に村山塊多の「鉄の童子」と平山蘆江の「鈴鹿峠の雨」と泉鏡花の「薬草取」と柳田國男の「山人外伝資料」がよかった。2021/10/01
よみとも
5
文豪たちによる山の怪談・奇談を集めたアンソロジー。安定の岡本綺堂・泉鏡花は言わずもがな、火山に空飛ぶ河童という異色コラボの「千軒岳にて」(火野葦平)、死者の書を思い出した「河原坊」(宮沢賢治)、あの三行だけでおぞましい話に変貌する「魚服記」(太宰治)が印象的でした。さらに巻末の柳田國男「山人外伝資料」がよかった。山人は日本の先住民である、という説は学説としては未熟だったかもしれませんが、その語り口には文学的な想像力を掻き立てる熱があります。東雅夫さんの解説も読みごたえありました。2024/04/01