内容説明
生誕こそ、死にまさる真の災厄である。
ただひとつの、本物の不運は、この世に生まれ出ることだ。──「暗黒のエッセイスト」が放つ、独特のユーモアと強烈な皮肉に満ちたアフォリズムに、読者は一瞬にして呑みこまれる。
静かに読み継がれてきた、「異端の思想家」シオランの〈奇書〉を新装版で刊行。
あまりにも完全な地獄は、楽園と同じように不毛である。
あらゆる思想は、損なわれた感情から生まれる。
一冊の本は、延期された自殺だ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
内島菫
19
午前三時の眠れぬ夜から始まる本書は、私たちが時間でもあることに気づいてしまった人の懊悩と快哉のひとり二重奏であるかのようだ。シオランのいう逆説や否定こそが本当に思えるのは、二項対立を形成するペアが根っこではつながっていたり、同じものの表裏であったり、縁として支え合ったりするからだろう。訳者が跋文で、シオランの言葉を論破するのは難しくないとしつつも、同時にシオランの言葉に返す言葉が見つからないと告白するのもまた、シオランがあらわにしてみせた私たちの倒錯性/二重性を示している。2021/12/16
双海(ふたみ)
8
「生誕こそ、死にまさる真の災厄である。」 異端の思想家シオランの奇書。静かに読み継がれてきた書物は、やはり静かに読み継ぐよりほかはない。2025/04/01
Kano Ts
8
これがアフォリズムって文体か~。この目的には沿わないんじゃないかなぁ。というのが第一印象。中には思わず笑ってしまうような生きる力を与えてくれる文章もある。間違いなく思想としては一流だろう。ただアフォリズムという文体の性質の問題だと思うが、僕にとっては本全体としての方向性というか積み重ねが感じられなかった。簡単に言えば「名言集」みたいな感じで、気づきは与えてくれるが深みが足りない(読み取れない)という感じ。お守り代わりに本棚に入れておきたい本ではある。たまに取り出してぺらっと読めば生きる力を与えてくれる。2024/04/28
𝐂𝐄𝐋𝐄𝐒𝐓𝐈𝐍𝐄
6
突き抜けた絶望の言葉からは明るさを感じた。二階堂奥歯さんがたびたび引用しており、シオランの著作の中で最も内容が鋭いと評していたため、手に取った。アフォリズムが連なる形式は、読みやすかった。2023/12/22
東京湾
5
「救済などはないという確信は、救済の一形態であり、救済そのものでさえある。そこから出発して、みずからの生を設計することもできようし、一個の歴史哲学を構築することもできるだろう。解決策としての、唯一の脱出型としての、解決不可能なもの...」行為を否定し、存在を否定し、誕生を否定する果てのない呪詛。稀代のペシミスト・シオランによる劇薬的アフォリズム集。現世に対する徹底的なまでの懐疑と絶望の中には軽妙な皮肉とユーモアが光っており、その簡潔な言葉に含まれる辛辣さもいっそ清々しく感じられた。2021/12/19