内容説明
少女、聖女、鬼女、そして極道――。
結婚、出産、独立……タブーを打ち破りながら全身全霊で演じてきた女優が語り尽くす。
医者志望の高校生が徐々に女優という仕事に取り憑かれていく。大女優の年代記、仕事論、そして美の下に隠す狂気を語った濃厚な一冊。
※この電子書籍は2018年2月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
86
面白かった。岩下志麻ってものすごい。演じた役のバリエーションの豊富な事。個性派と呼ばれる俳優さんでもこれほどバラエティには富んではいるまい。卑弥呼に極妻、瞽女に清純派まで多様に働いている。これは映画監督と結婚したせいもあろうが、圧巻であった。それにまた若い頃の岩下志麻のかわいい事。役でおかっぱ頭にした写真が一枚掲載されているが、ものすごくかわいい。私が物心ついた頃の岩下志麻は、もう恐ろしいおばさんだったので、この多彩さを知らなかった。春日太一にはこれからも男優ばかりでなく、女優のこういう本を出して欲しい。2021/06/25
ヒデキ
33
女優「岩下志麻」さんの映画人生を春日太一さんとの 対談で語ってくれています 岩下さんの役の作り方って憑依型になるタイプなんですね。 私たちの時代って岩下さんの存在が大きくて 彼女の役の変化を感じにくくなっていたのに気がつきました。2021/07/03
Isamash
25
1977年生まれの映画史研究家春日太一2018年出版著書。岩下志麻に一年以上のインタビューを敢行しまとめられた。最後の大女優?岩下の凄さを感じさせられた。同時代に生きて無いが春日氏の映画研究の深さと聞き手としての能力の高さにも感銘。彼女の主演映画は、鬼畜、離れ瞽女おりん、鬼龍院花子の生涯、及び極道の妻たち、しか見ていない。それでもその圧倒的な存在感には昔、圧倒された。役柄も幅広く凄い大女優とも思っていた。事前研究も深く行い日常からその役になりきるという、演技の秘密が語られていた。共演者の彼女の評価も興味大2023/12/10
栗羊羹
11
随分、長いこと積読しておりました。今年の大河ドラマ繋がり…という訳ではないけど、引っ張り出して読んでました。『草燃える』の北条政子・『独眼竜政宗』…良かったな〜『鬼龍院花子の生涯』『極道の妻たち』…最高でした。女優という仕事に取り憑かれていき、全身全霊で演じていく…このような女優さん、これからも現れてくれるのだろうか。2022/12/10
アンパッサン
4
読みだしたらとまらなくなった。小津からはじまり、篠田、五社をとおって、つみあがっていく岩下志麻のキャリア。三船、仲代、若山、勝、緒方、桃井、小川…。数々の名優たちとわたりあう。キャリアっていうかもはや歴史。いったい誰がこの人に及ぶだろうか。インタビュー、穏やかに進んでいくのだが、たまに差し込まれる春日さんの明確な問いにハッとさせられる。個人的には「はなれ瞽女おりん」が一番好きで、クライマックスのアレが…だったとは。かっこいい岩下志麻がみたいので、これから『疑惑』、観ます。2022/05/13