内容説明
特集 それでも民主主義
アリストテレスが民主主義(デモクラティア)を語った時、
それはプロの政治家を選挙で選ぶ現代の常識とは異なって、
市民がくじ引きによって交代で公職を担当する政治制度を意味していた。
しかもそれは、多数者(デモス)が自らの利益のために
国家(ポリス)を支配する政治のことで、
公益のために市民が協力する国制(ポリティア)の逸脱型とされた。
つまり良き政治体制を意味していたわけではない。
今日、民主主義はほとんど唯一の正しい政治のやり方を意味し、
それに疑問を呈することはとりわけアメリカでは異端である。
だが現実の民主政治に選挙民が不満を募らせているのは、
政権交代後の期待が幻滅に変わった日本だけではない。
民主主義の総本山を自認するアメリカでもワシントンへの不信は強いし、
ヨーロッパでは高邁な欧州統合の理想は、
草の根の民衆の反発に晒されている。
他方で非民主的な中国は世界で存在感が急速に増している。
もし権威主義体制がうまくいくのなら、
なぜ民主主義でないといけないのか。
民主主義とはいったい何で、その可能性と限界は何なのだろうか。
改めて民主主義を正面から考えてみようではないか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ishida Satoshi
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読了。今日、民主主義は多くの国々で正しい政治体制であると考えられています。ですが現実の民主政治における制度としての選挙、そして選挙で選ばれた代表によって政治体制に人々が不満を募らせています。論者の一人である政治学者のジョン・ダンは民主主義普及の成功を語りながら、一方で「民主主義による権力の正当化には、その歴史的ライバルのいずれよりも堅牢な何かがあるが、残念ながらそれは耳ざわりの良いものではない」とし、その危うさを指摘します。民主主義は人々が判断を下すに当たって認識し、考慮しなければならない様々な事柄に注意
denken
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宇野重規が平等について述べていたのが,自由の善悪ばかりが目に付く今日このごろでは,物珍しくて気に入った。2013/01/06
チコちゃん
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読んだ、と言っても興味のある田辺明生著「『開発民主主義』の挑戦-多様性社会インドの道」だけ。 インドの経済発展過程について、その独立以後の政治史を含め、説明・分析。 民主主義を確立してからの経済発展、という類を見ない発展形態(民主化と経済発展の同時的な進展)は、一見して国民統合の妨げとなりそうな、インドの多層的多元的社会によって支えてられている。キーワード:インフォーマル経済の活況、内需主導型経済、多様な民衆の政治かつ経済主体化。2012/12/18