内容説明
アルプスの山中で開催されたスノーボード選手権で、女性選手サスキアが姿を消した。十年後、当時の関係者のミラは四人の元選手とこの地で再会する。喜びもつかの間、ホテルで見つけたカードが雰囲気を一変させた。“サスキアを殺した”――ホテルは孤立し、彼らは疑心暗鬼に陥っていく。密室状況のサスペンスを描く傑作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
46
ハヤカワ・ポケット・ミステリの表紙デザインは秀逸なものが多い。今回もまるで描かれるシュプールのように白を背景に赤文字で原題が描かれ、その後ろに小さくボーダーが見える。寒慄という言葉はてっきり造語かと思っていたら「ふるえおののくこと。ぞっとすること」と意味が載っていた。戦慄という言葉でもいいのに、わざわざ「寒」の文字を加えたということは、更なる寒さがその震えや恐怖に加わるということだ。過去行方不明になった女性の知人が雪の中に集められ、女性を誰かが殺したというメッセージが。陸の孤島になってしまい疑心暗鬼に。2021/07/01
うまる
42
失踪事件の関係者が雪山に集うサスペンス。やましい事がある者達が疑心暗鬼になる様はよくある展開ですが、そこにスポーツを入れたのが新しいと思います。プロスノーボーダーの少しチャラい生活が垣間見れて興味深い。アスリートとしての戦いに加えて、女としての戦いが描かれている所も面白かったです。著者は元プロなので、勝手な想像だけではないだろうから、どこまで実際ある話なのか気になりました。 最終的にどういう手順を踏んで行方不明に至ったかが意外に良くできていたので、長々読んできた甲斐がありました。ラスト1行もセンスが良い。2021/08/26
しゃお
33
アルプス山中、スノーボード選手権で姿を消した女性選手サスキア。10年後、当時の関係者5人がこの地に集められ、閉ざされた雪山の中でサスキアが消えた真相が明らかにされていく。勝つためになら手段を問う事も無いアスリートの心理や女性同士のライバル意識、駆け引き等の描写が、著者も元プロ選手という事でなんといっても恐ろしかったです。ゆえに主人公のミラを始め感情移入しにくく、短く現在と過去の章立てされている事で読むのに時間かかったかも。愛憎渦巻く人間関係は夜ドラっぽくもあり、最後の最後でもまたゾクゾクさせられました。2022/02/20
本木英朗
28
英国で生まれ、今はオーストラリア在住のアリー・レナルズのデビュー作である。アルプス山中。かつてこの地で開催されたスノーボード選手権で、女性選手サスキアが姿を消した。そして十年後、当時の関係者であるミラは、四人の男女とこの地で再開する。旧交を温める一同であったが、ホステルで見つかったカードが、その雰囲気を一変させる。サスキアを殺した、のメッセージが――という話である。まさに「密室状況のサスペンス」そのものだよねえ。いやはや、面白かったね。また10年以内に読もうと思う。2022/01/24
miya_feel
22
頭の中が完全に、冬の雪山、スノーボード、ハーフパイプ、欧州プロ選手、恋愛、転倒、怪我、吹雪、氷河、クレバス等で満たされていくサスペンスである。脳内はずっとホワイトアウト状態のまま。加えて誰にも感情移入出来ないため、余計にぞくぞくしながらページターナーとなっていく。十年ぶりに再開した元スノーボーダー達。標高三千五百メートル地点のホステルで次々と起きる不可解な出来事。そこに十年前のパートが挿入され過去と現在がリンクされる。冬の雪山での孤立感、十年ぶりに会うアスリート達の心理描写、探り合い、駆け引き、そして狂気2021/07/12