模倣の罠 自由主義の没落

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模倣の罠 自由主義の没落

  • ISBN:9784120054303

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内容説明

冷戦終焉から三〇年――。非自由・反民主の濁流に呑み込まれゆく世界。
冷戦に勝利した後、なぜ西欧世界は政治的均衡を失ったのか。西側を模倣しようとして失敗した東側諸国では極右政党が伸張。トランプのアメリカもこの流れの中にある。自由主義の試練を描く。

目 次

序 章  模倣とその不満
終焉という感覚
命名と必要性
模倣の緊張
怒りの開花

第1章  模倣者の精神
消えゆく光
正常という重圧
人生はどこか他の場所にある
城門への侵入者たち
降伏としての移住
正常の耐えがたい両面性
新たなドイツ・イデオロギー
元自由主義者の非自由主義
合唱

第2章  報復としての模倣
ロシアの修正主義の源流
西洋の物語をひっくり返す
権力を強化するための民主主義の模倣 
操作された選挙はどのように機能するのか
模倣の罠
松葉杖をついた怒れる男
仮面を がすという模倣
破壊的な模倣の行き詰まり

第3章  強奪としての模倣
恨みの軸
我々は何様のつもりなのか?
「素晴らしい民主主義」
アメリカというガラスの家
競争相手としての模倣者
アイデンティティの窃盗としての移民
侵入としての模倣
 をつくことはメッセージだ
偽りの行為をやめる
結末

終 章  ある時代の終わり
北京の一九八九年
イデオロギーを超越する政党
盗用としての模倣
転向のない大国
中華街か、人種のるつぼか?
模倣の苦しみ
偽善のない世界

謝 辞
訳者解説

索 引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Satoshi

14
冷戦が終わり、旧共産国が自由主義を取り入れた。それを著者は模倣と呼び、それが行き詰まり、ロシアでは権威主義的なプーチン政権が不正選挙により君臨し、ウクライナ戦争まで起してしまった。そして、その模倣の時代も中国の台頭により終焉するが、中国は自国の権威主義を他国に広めるだけであり、自由主義が復刻するわけでない。自由主義の没落はソ連解体により共産主義が瓦解し、自由主義が完全に肯定されたと考えるアメリカと西側諸国の傲慢さによる反発ではないか。トランプが一時的にでも政権を取ったこともその傲慢さが原因と思う。2022/09/25

Yuki2018

9
共産主義崩壊後の中東欧やロシアでは、条件が整わない状態で民主主義の模倣が志向されたが、西欧の「道徳的優位性」の押し付けは、模倣する側に屈辱感のみを与え、国民の支持を集めることなく、結局、自由主義は根付かなかった。プーチン、オルバーン、トランプが支持を集めるのは、エリートの偽善・都合の良いルール押し付けへの反乱だ。更に、イデオロギーを持たない中国の台頭は、冷戦の帰結だった「模倣の時代」に終わりを告げた。啓蒙思想に基づく自由主義は模倣すべき善、という認識自体が失われた時代になったと言って良いだろう。2021/07/23

Toska

6
何故プーチンはあのように暴れるのかという関心から読み始めたが、より広がりのある内容だった。「歴史の終わり」的な自由民主主義万能論に対する反感は根強く、冷戦終結で苦杯をなめたロシアはもとより、解放されたはずの東中欧や、リベラルの本家たるアメリカ(!)にまで浸透していた。足を踏まれた者の痛みは踏んだ者には決して分からないというが、民主主義の「模倣」を強いられた人々の憤懣と屈辱も、従来あまりにも軽視されていたように思う(無論、それが彼らのルサンチマンを100%正当化するわけではないのだが)。2022/10/02

人生ゴルディアス

6
超面白かった。世界で右傾化やポピュリズムが台頭していることを、自由主義を巡る感情の問題として解釈している。特に旧共産圏の国が、正しさ故に冷戦に勝利できたとする西側の体制へと移行する際、西側は政治・道徳において優れた国であり、「模倣する側」は劣る存在であり、優れた側が劣った側を監視指導する合法的な権利を得た空気になったが、それは明らかに模倣する側の国の文化や尊厳を踏みにじっており、その不毛で卑屈な模倣から抜け出そうとするのが今の状況である、と。トランプの行動が同じことの裏面という解釈が非常に秀逸だった。2021/05/30

confusion_regret_temptation

2
共産主義の敗北が決定的なものとなった1989年以降のかつての共産国の民主化が、自由民主主義国の模倣を押し付けられたように感じさせてしまった反動で今では世界的に自由主義が支持を失ってきている、という概要。それでも著者は自由民主主義を諦めているわけではなく、今こそ改めて自由主義が抱える課題に真摯に向き合うことを期待している。とても面白い、興味深い考察だった。トランプのことを相当クソ味噌にこき下ろしているきらいはあるが、概ね理解できる内容。2021/12/04

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