内容説明
謎めく敵意。食い違う過去。彼女は何を知っている? オーストリアの田舎に暮らす、カンボジア移民のキム。その誕生日の祝いの席に突然現れた女性は、少年の頃にポル・ポト政権下のカンボジアを共に逃れた妹のような存在であり、同時にキムが最も会いたくない人物だった……。かつての過酷な日々に、いったい何が起こったのか? 『国語教師』でドイツ推理作家協会賞を受賞した著者による、最新文芸長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
213
週刊文春のミステリ・レビューで評価が高かったので、読みました。ユーディト・W.タシュラー、初読です。本書は、ポル・ポト派の大量殺戮歴史大河悲劇ミステリ、骨太の人間ドラマでした。ナチスのホロコースト以上に酷い悪行です。 欧米の50歳の誕生パーティーは、日本の還暦のお祝いの様なものかも知れません。 http://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-773514-72021/07/19
とん大西
133
眉をひそめ読む、眉間のシワが幾重にも刻まれるほどに…。1970年代、狂気を振りかざしたポル・ポト政権の残滓。必死の思いでカンボジアから脱出したキムとテヴィ。亡命先のオーストリアで得た平穏は果たして真の幸福たりえたか…。つきまとう暗黒時代の恐怖、40年の星霜を経た今なお。キムとテヴィの葛藤に幼馴染みのイネスや里親モニカの群像が切なく絡む人生模様。誕生日パーティーが行われる2016年、蹉跌ばかりの1990年代、残酷なポル・ポト時代。各年代を行きつ戻りつ濃度を増すミステリー。なんと非道、なんたる重さ…。2021/08/15
chantal(シャンタール)
87
キムの50歳の誕生日パーティーにサプライズゲストとして現れたテビィは、子供の頃カンボジアから共にオーストリアへ逃れてきた妹のような存在。しかし彼らの間には微妙な空気が流れる。そして現在と過去、オーストリアとカンボジア、目まぐるしく舞台が変わる。クメール・ルージュ時代のあまりの残虐さに心が苦しくなるが物語がどこへ向かって行くのかも気になりページが進む。人を裁く事も赦す事も、何故こんなに難しいのか?そもそもそれは人類の領域なのか?人間ってどこまでも残虐になれるのだなあ。今の過激なSNSが彼らに重なって見えた。2022/01/15
がらくたどん
54
『国語教師』が諸般の事情で読み進められなかったのでタシュラー・リベンジ。ヨーロッパで平穏な家庭を築いたカンボジア移民のキム。50歳の誕生日に息子が「プレゼント」として招いた「幼馴染」がなだめていた過去に波紋を起こし波立たせる。ポルポト圧政下を生き延びた少年少女。親族を殺され自身も迫害された「被害者」側の傷だけでなく、少年闘士として同族の虐殺に加わった「加害者」側の精神的な崩壊を同じ痛ましいものとして描き出している点に心惹かれる。小さな違和感を抱きながらも思い込みに支配される心理を実体験できる仕掛けも見事。2022/03/26
星落秋風五丈原
42
オーストリアの田舎に暮らす、カンボジア移民のキムは、受け入れ家庭の娘イネスと結婚し三人の子供に恵まれて五十歳の誕生日を迎えようとしていた。キムの息子ヨナスがテヴィに出したメールから物語が始まる。「あなたのお父さんは私が来ることを知っているのか」など明らかに乗り気でない反応が文面からも感じられ、誕生日パーティという祝いの席に早くも不穏な空気が漂う。誕生日に招かれたテヴィが家族の前で「今日があなたの誕生日ではないって誰も知らなかったの?」と暴露する。2021/06/18




