内容説明
悪党、若妻、修道僧、騎士などの多彩な人物がおりなす性と笑いの物語。大胆に官能を楽しむ笑いと愛の物語――機知ある悪党、不倫の若妻、女色にふける修道僧、強情が仇となる人妻、悲恋の王子と王女、復讐された高慢な未亡人、自分に克った聡明な老王など、多彩な人物が、人間の欲望を大胆に肯定し、愛と正義の与える不思議な力で、官能的生を楽しむ永遠の名作。男女のリアルな生活とその美醜をあますところなくとらえ、機智と哀歓に満ちた一幕として明るい笑いとともに、人間性を開放した、ルネサンス期の傑作の楽しい物語。当代随一の作家が、美しい言葉で面白く説き語る愛の物語集。永遠に新鮮な古典の親しみやすい説き語り。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
34
田辺聖子セレクトの「デカメロン」で、序章と結びをのぞき19編を収録。色恋もあれば、快楽もあり、また知恵比べ、矜持と誇りから死にいたる話までバランスよく選ばれていて、八分の一カットのショートケーキを味わうように楽しむことができます。気に入ったらデカメロン・ケーキをホールで大人読みするも良し、本書でもう十分味わったと感じるもまた良し。このセレクトの中ではギャグ横溢の「夫の妊娠」、老王の克己心「二つの勝利」が印象的。既訳をもとにした田辺流アレンジがあって読みやすくなっています。人間を肯定する理知のすばらしさ! 2021/09/19
コニコ@共楽
17
編者としての田辺聖子は、序文でこう語る。「『デカメロン』の愛読者として、読者の皆様とともにこの奇書を賞玩するたのしみを分かちたいと思う。」まったくその通り。全訳の上巻を読み終えて、この抄訳を読んでも、また二度楽しめるという短編集。100話の中から、彼女のお気に入りを19選んだものだ。それに田辺聖子の註が加わって、彼女なりの解釈がおおらかで楽しい。全訳では、第〇日目、第〇話としかないものに田辺聖子がつけたタイトルも「懺悔の天才」、「修道院の掟」など、一捻りしていて面白い。2021/08/22
paluko
8
平川訳『デカメロン』の注・解説部分で何度も引用言及されているのに興味をひかれ読んでみました。百物語の中の19篇ですが、一番おいしいところをうまく抜き出しているのと、タイトルの付け方(「懺悔の天才」にはしびれました)、すんなり筋が頭に入ってくる文章など紹介の役を十二分に果たす一冊だと思います。文庫は1987年刊。1979年に『グラフィック版世界の文学4』として刊行されたものに加筆したものだそうです。2021/09/12
ふ
2
デカメロンってこんなお話だったのねぇ…ウィットに富んでてテンポが良く、面白かったです。田辺聖子編だから?全部読んでみたくなりました。2014/09/22
銀木犀
2
田辺聖子なりに解釈して抜粋したデカメロン。一から翻訳したわけではないのでそこまでのあたらしさはない。100も話があると好きな話のチョイスもいろいろだなあとは思う。どうせなら登場人物に関西弁を話させたりすると面白かったかもしれない。2010/10/13