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内容説明
憤ったり、すねたり、思索したり、孤独に沈む性悪な猫たちは、性悪女を自覚する彼女の分身。でも、託すべき想いと託される猫との間には距離があり、両者のモノローグが交響し、静謐な詩情の世界が現れる。『さくらに風』にはこんなセリフがある。「やさしい自分であろう、やさしさを失くすまい」;と貴方が思うとき、貴方は淋しいのだ。やさしく在ろうと努めたことが、誰の為になったろう……と思うとき、貴方は傷だらけだ」。自立した女性の繊細な感情を猫のしなやかな姿態に託した鋭利な感性と詩情の世界。急逝した著者の代表作がよみがえる。収録作「出口」「性悪猫」「長ぐつ はかない ねこ」「時間の兵隊」。単行本未収録作1編と新たに発見された貴重な猫イラストを初収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パフちゃん@かのん変更
55
何と表現したらいいのか分からないけれど、不思議な物悲しい様な切ない様な気持ちになる。漫画だけど詩のようだ。そして哲学のような深いものがある。昔、母親の里の二階でCOMを読んだ時に感じたような独特の気分。作者はもう亡くなられたそうです。2017/11/23
Shoko
17
読んだというより、鑑賞したというべき本。猫たちの、美しく、生き生きとした様子に、思索に満ちた言葉。まるで詩のようなマンガでした。「自分を憎むなんて 思い上がりでないかしら こんな自分は自分でないと 言いたい 裏返しなのではないかしら」 佐野洋子さんのエッセイで知り、手に取った本。これからも折にふれ読み返していきたい。本になりました。2017/10/26
ムーミン2号
11
猫が猫として描かれた稀有なマンガであり、猫が猫らしくない思考をしながら猫らしい行動をする稀有なマンガであり、その猫の思考と行動とが妙にマッチしてしまうこれまた稀有なマンガである。まるで詩集をめくるような感覚に襲われる一冊だ。とにかく、優れたマンガ集である、としか言いようがない(つまり、このマンガ集のどこからか一つでも引用し紹介しようものなら、これも! こっちも! となってしまうということ)。時に棚から出しては読んでみたいマンガがまた増えた。2021/03/07
ゆりあす62
10
古本屋さんで見つけ、すぐ買いました。この写真の本より、古い本で、猫も背中向けて顔だけこちら向きという表紙です。 上目づかい、どこ見てるかわからない表情で「すさんでいるの」と作中のことばそのままで、つれて帰らないわけにはいきませんでした。 猫の絵も最高に素敵ですし、物語と言うより、みなさんもコメントしてますが、詩集ですね。 どの猫もにも、作者紫さんの、とてもやさしい、でも、変にやさしすぎない愛をかんじました。みんなかわいいですが、裏表紙の寝てる(最初死んじゃってるのかと思った)猫には、撃沈です。2015/06/24
ぱせり
8
こういう寂しさややるせなさは、自分のなかに置いておくと、少しばかり鬱陶しいけど、猫になって寄ってきたら、よいしょと抱き上げて、やさしく撫ぜてやれるかも。さびしさが猫の形になっている。2010/11/23