ちくま学芸文庫<br> カント入門講義 ――超越論的観念論のロジック

個数:1
紙書籍版価格
¥1,430
  • 電子書籍
  • Reader

ちくま学芸文庫
カント入門講義 ――超越論的観念論のロジック

  • 著者名:冨田恭彦【著】
  • 価格 ¥1,320(本体¥1,200)
  • 筑摩書房(2021/05発売)
  • ポイント 12pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480097880

ファイル: /

内容説明

我々が生きている世界は、心の中の世界=表象にすぎない。その一方で、しかし同時に「物自体」はある、とも言うカントの超越論的観念論。そのカラクリとして、基本的なものの見方・考え方の枠組みが人間の心にはあらかじめセットされているとカントは強調したわけだが、この点を強調することによって、その哲学は、後年の哲学者達の思想的転回に大きく貢献したと著者は説く。平明な筆致で知られる著者が、図解も交えてカント哲学の要点を一から説き、各ポイントが現代の哲学者に至るまでどのような影響を与えてきたかを一望することのできる一冊。

目次

はじめに
第1章 カント略伝
ケーニヒスベルクとプロイセン
両親
フリードリッヒ学院
ケーニヒスベルク大学
クヌーツェン
自然科学への関心
出版の事情
家庭教師として
二つの論文
『宇宙の一般自然史と理論』
星雲説
ラプラスの説
カントの見解
ニュートンへの不満
ランベルトと要約の刊行
再刊とラプラス
トマス・ライト
デカルトとスヴェーデンボーリー
マギスターの学位取得
私講師
昇任の試み
招聘を断って
一七五六年以後(一七七〇年まで)の著作
ヒュームを読む
沈黙の一一年と「批判期」のカント
晩年、そして逝去
第2章 なぜ「物自体」vs「表象」なのか?
最初の疑問──物自体と表象
物自体
触発と表象
原子論の「二重存在」説
物そのもの─触発─観念
ロックに関するカントの知識
ロックとのもう一つの関係
物自体はなぜ認識不可能なのか
バークリの場合
ヒュームの場合
カントの言い分
超越論的観念論
バークリの観念論との違い──「ゲッティンゲン批評」をめぐって
二つの問題
物自体と現象
第3章 解かなければならない問題
カントにとっての問題
分析判断と総合判断
カントが挙げる例
ロックの「暗示」
アプリオリとアポステリオリ
必然性と普遍性
アプリオリな総合判断
アプリオリな総合判断の実例
純粋数学
純粋自然科学
形而上学
『純粋理性批判』におけるカントの問い
純粋理性の「法廷」
第4章 コペルニクス的転回
空間
直観
純粋直観としての空間
時間もまた
知性
純粋知性概念(カテゴリー)
量のカテゴリー
質のカテゴリー
関係のカテゴリー
内属性と自存性(実体と偶有性)
原因性と依存性(原因と結果)
相互性(作用するものと作用を受けるものとの間の相互作用)
様相のカテゴリー
判断の形式
量と質
定言判断・仮言判断・選言判断
判断の様相
カテゴリー表と判断表
コペルニクス的転回──カントのもくろみ
第5章 「独断のまどろみ」から醒めて
もう一つのハードル
「独断のまどろみ」からの覚醒
因果関係に関するヒュームの見解
ヒュームショック
さらなる課題──「演繹」
経験的演繹と超越論的演繹
問題の再確認
「演繹」の自己評価と二つの面
客観的演繹と主観的演繹
客観的演繹
知覚判断と経験判断
ちょっとひと息
多様なもの
カントが自明視しているもの
第6章 主観的演繹と図式論
結合(総合)
統覚の根源的統一
認識
判断と純粋知性概念
もう一度、ちょっとひと息
図式論
『純粋理性批判』の構造
超越論的図式
図式と像
図式の具体例
図式論再説──ロックにまで戻って
対応する直観がある概念とない概念
図式と像・再説
時間と図式
第7章 アプリオリな総合判断はいかにして可能か
問いの確認と答えの基本方針
概念の「構成」
概念の「普遍性」
想像と想像力
「純粋直観において」
紙の上の作図の場合
再確認──『発見について』より
特殊性の度外視
純粋直観を頼りに
形而上学の場合
経験との関係
第二の類推における証明
「概念が可能的経験に対して持つ関係」再考
形而上学もしくは純粋哲学と、自然科学の原理のおもしろい関係
超越論的観念論再説──「ゲッティンゲン批評」に戻って
第8章 魅力と謎
超越論的観念論の魅力と謎
実在論のしっぽ
ロックとの対比・再説──歪んだ論理
新たな「物そのもの」の導入の不可能性
感覚器官の入る場所がない
つき合わせのない対応
概念図式
はしごは投げ捨てられるか──『純粋理性批判』の言説そのものの位置
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

44
本書の特徴は、研究の厚みがあるカントが衒学的にならないように、用語とその意味を簡潔に規定していることにあります。これによって、カントを文化批評に応用でき、第8章のカント批判に展開しているので、著者の意図を汲み取れば、用語の簡略化は読者におもねるものでないのが分かります。それこそ、用語の厳密性を追求することは、分析判断であって、総合判断ではないでしょう。カント批判でデイヴィッドソンが登場しますが、ヘーゲル、ニーチェにも触れており、ものの見方の普遍派と変化派に分けて理解するという議論を興味深く読みました。2020/03/29

ラウリスタ~

27
なるほど、なんで今まで哲学書を読んでも分からなかったのかが、この本を読むことで分かった。というか、今まで字面だけを追っていた読書がいかに無駄であったのか、よく分かった。超越論とかアプリオリだとか、そういうもっとも大切な単語から懇切丁寧に説明してくれる。僕のような哲学の「て」も知らない読者にとっては、この講義形式の入門書を通過しないと絶対にカントを読むことはできないだろうなと思った。ただどこか一箇所を読み飛ばしたら、その先が一気にまた分からなくなる。積み木の城を組み上げていくようなとっても大変な読書。2017/04/26

うえぽん

22
カントは物自体から触発されて現れる表象のみを心が知覚し、物自体は存在するがそれ自体を認識することはできないとする。二つの認識源泉のうち、感性については、現象としての対象を直観する際に、すべて空間及び時間の中に現れるとし、知性とは、単一性、実在性、相互性といった12個のものの見方(純粋知性概念)だと言う。これらには経験によらず、アプリオリに備わった仕掛けがあり、例えば心の中や紙の上で図形を描き考察することが可能と言うが、自分には数学や自然科学においても、感覚的な経験なしに心の中だけで考察可能とは考え難い。2023/09/29

またの名

20
砕き過ぎでは?と思わせるほどの口調で、しかし押さえるべき点は逃さない絶妙な解説。専門家でないからこその距離を置いてカントのロジックを明らかにし、無限判断を不確定命題と訳す方が良いと指摘するなど、語学的にも十分な説明を入れる。ロックやバークリら英語圏の系譜から眺める視点は物自体を巡る認識論については秀逸だけど、著者が筆を擱いた先にある認識不可能な物自体以上の性格を持つヌーメノンや自由といった、カントの魅力的かつ厄介な本領には言及しない。既に良書だが消極性を積極性に転じるあのロジックまで追及してほしいところ。2017/11/06

泉のエクセリオン

16
本書はカントの難解な用語をドイツ語、ラテン語といった語源まで遡って解説しているので理解がかなり深まる。又「先験的」というのはカントの著書で良くみるが、「先験的(ア・プリオリ)」とア・プリオリな総合判断のことで、本当に普遍的な事柄なら、つまり真理であるなら、経験に依らずに証明可能なハズである。大体のことは「純粋知性概念、12のカテゴリー」の中にあるのでまずはそれの批判、検討を行う。なので「純粋理性批判」とは経験に依らない先験的な理性、その批判ということであろうか。「人間は何を知り得るか」を検討していくのかな2024/07/01

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/11522270
  • ご注意事項

最近チェックした商品