内容説明
近代の歩みは音楽が雄弁に語っている。バッハは誰に向けて曲を書き、どうやって収入を得たのか。ハイドンの曲が徐々にオペラ化し、モーツァルトがパトロンを失ってから傑作を連発したのはなぜか。ショスタコーヴィチは独裁体制下でいかにして名曲を生み出したのか。音楽と政治経済の深い結びつきを、社会科学の視点で描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
85
タイトルを見てこれは面白そうだと、欣喜雀躍して読み始めたのだが…。私には、著者が何を主張されたいのか理解できない。著者が、音楽に関して多彩な知識をお持ちなのはわかった(尤も、紹介されている情報に目を見張るものはない)。随所に、アダム・スミス、トクヴィル、オルテガなどの主張や、吉田秀和先生の評論などが紹介されるが、クラシック音楽と社会思想との関係について、著者は、事実関係を説明しようとされているのか、こうあるべきという主張をなさりたいのか、その立脚点すら解読できない。自分の読解力の乏しさを恥ずかしく思う。2021/08/12
またの名
10
作曲家ヤナーチェク作品の独語訳を担当したのがカフカの遺言を守らず世間に小説を公開したブロートで、彼を介して二人が会ってたとは。社会が巨大化し集団の統治が問題になると音楽においても指揮者が現れるといった社会と音楽の関係性を軸に、つらつら書き連ねられた本。ナショナリズムからソ連や中国の全体主義まで扱いながら、ワーグナーとナチス政権の連関は触れないのが勿体無い(ワーグナーもこの分野の代表格アドルノも出てくるのに)。スマホでコードを読み取って言及作品が再生する仕組みを、巻末ではなく冒頭に載せてたら素晴らしかった。2021/08/03
武井 康則
8
音楽以外の社会に関する言及が多く、その内容にオリジナリティーがないので冗漫。しかも様々な引用は博学だが、関連がないため恣意的で、根拠のない断定、強引な書きぶりが腹立たしくなってくる。2024/01/07
どら猫さとっち
8
バッハからショスタコーヴィチまで、クラシックの作曲家たちはどのような想いで、どのように生活をして作曲したのか。社会科学の視点から浮かび上がった、彼らの姿を浮き彫りにした好著。ナショナリズム、政治体制、最新技術にパトロンとの関係。作曲家たちの事情も垣間見えて、これが面白い。本書を読んでクラシック音楽を聴くのも面白いし、聴きながら本書のことを思い浮かぶのもいい。初心者向けではないが、作曲家の素顔に迫る一冊としても最適だ。2021/08/04
ヨハネス
6
有名な話も多いので読み飛ばしてもいいのだけど、情報量が多くてなかなか進まない。時々、知らなかったエピソードや曲の紹介が混じるから丁寧に読んでしまう。シューベルトはピアノの名手でもなければ社交も厭う人だったのか。イメージ違うな。2021/11/24