内容説明
半世紀に及ぶ粘り強い取り組みによって,窮乏する米沢藩を立て直した上杉鷹山(一七五一~一八二二).江戸時代屈指の「明君」として知られる彼が目指したのは,何のため,誰のための政治だったのか.改革を担った家臣たちの思想と行動,また鷹山明君像の形成を新たな角度から描き出し,その改革を日本の歴史に位置づける.
目次
序章 上杉鷹山は何を問いかけているか┴第一章 江戸時代のなかの米沢藩┴1 開発・成長の時代┴2 一八世紀の経済変動┴第二章 「富国安民」をめざして┴1 江戸時代の「富国」論┴2 竹俣当綱と上杉鷹山┴3 「富国安民」の理論┴4 三谷三九郎と馬場次郎兵衛┴5 殖産政策の展開 郷村出役と村々┴第三章 明君像の形成と『翹楚篇』┴1 明君録とはなにか┴2 莅戸善政と上杉鷹山┴3 莅戸善政の思想と『翹楚篇』の鷹山像┴4 『翹楚篇』と寛政改革┴第四章 「富国安民」の「風俗」改革┴1 藩財政と民のくらし┴2 莅戸政以の藩政構想┴3 文化初年の民政の展開 北村孫四郎の奔走┴第五章 「天下の富強の国」米沢┴1 「富強」藩イメージの形成┴2 高まる名声とその広がり┴3 「富国強兵」を問い直す┴参考文献┴図表出典一覧┴上杉鷹山略年表
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
breguet4194q
119
上杉鷹山はなぜ「名君」と言われるのか。本書では、数多くのブレーンの行動力と実績を取り上げつつ、その期待に応えた故に、名君になり得たと述べています。「富国安民」を掲げ、自ら一汁一菜や綿衣着用を行い、土民の実情に寄り添います。「伝国の辞」は本当に素晴らしい。政治家が、理想のリーダー像に挙げるのも、よくわかりますね。2022/12/15
佐島楓
59
上杉鷹山は名(明)君として有名だが、具体的にどんな施策を行った人物なのかそういえば知らないなあと思って読んでみた。鷹山公のふるまいもさることながら、彼の周りのブレーンがしっかりしていたから藩の財政環境の安定につながったようだ。福祉の部分を充実させることで「富国安民」を実現させたという点、現代でも参考になるはずなのだが。2021/03/25
ころこ
34
名君録にあるような逸話ではなく、歴史的資料による実証性から上杉鷹山の実像に迫ろうとする新書。しかし鷹山がなぜ歴史に残ったかは、分かり易い言行録があったからなので、それを抜きに読むのはそもそも何が凄いのかが分かり難い。本書には二つ特徴がある。ひとつ目は、米沢藩の改革を属人的な鷹山本人ではなく、鷹山を教育し彼の治世を支えた周囲の人たちに焦点を当てていることである。鷹山に教育を与え、前期の明和・安永の改革を担った竹俣当綱、後期の寛政改革を担った莅戸善政、莅戸政以の親子など、鷹山の万能さよりも周囲への影響力と、そ2023/03/10
崩紫サロメ
19
米沢藩主上杉鷹山を扱ったものであるが、戊辰戦争の敗者である鷹山の改革が、明治期に「富強」を実現した国として高く評価されており、本書は近代におけよる富強、つまり富国強兵との相違に着目する。鷹山にとっての富強とは「富国安民」であり、儒学的な民本思想に基づく。幕末の米沢潘見聞録に見られる富強のあり方も、軍事力の近代化とはほど遠い、農民的・商人的なものである。近世の「富国」論を通して、近代の富国論を問い直すという形。2021/02/19
ようはん
14
上杉鷹山の改革はいくつかの時期に分かれているが、後期は鷹山の設立した興譲館で学んだ人材が担う等、人材育成も重視して世代交代に成功したのも特徴的であろうか。 2024/08/08
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