内容説明
新婚の息子をひき逃げ事故で亡くした父親、希望退職を迫られた会社員が胸にしのばせるお守り、アルコール依存症の母親を許せなかった息子の後悔、夭折した部下に元上司が送り続けるファクス……あなたの隣にいるかもしれない、“普通の人々”が心の中に持つ特別なドラマ。人は苦難に陥ったとき、何を心の杖として立ち上がるのか。暗闇に希望の灯りがともる瞬間を切り取った珠玉のノンフィクション・コラム。(『こんな日もあるさ』を改題して文庫化)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やも
75
世の中に悲しみが溢れてる。淡々と綴られるノンフィクションコラムが20話。悲しみの中心にいる人が語るかのような体で綴られている。誰かに聞いてもらいたかったんだろうな、話したかったんだろうな、答えは求めてないんだろうな、1人で抱えているのは重かっただろうな…。読み手の私はその圧倒的な悲しみの前では、聞くことしか出来ない。悲しみは環境や状況ではなく、気持ちが孤独なことだと感じる。生きるっていい事ばかりじゃない。孤独の崖っぷちにいる時にはこれを読むのはいいかもしれない。気遣いのない悲しみに孤独が和らぐと思う。★32022/03/11
のんちゃん
41
生きていく上で困難や挫折に遭遇した時、人はどうやって自分自身を支えるのか、その杖となる物事は何か、を沢山の人にインタビューしたノンフィクション・コラム。以前にも作者の同様のルポを読んだ。その時から一貫して作者は苦境にあった人々の立ち直りや立ち直りかけを描いてきた。作者の目やそこを通した文章は不幸な話でもウエットにならず、その事がかえって事の真実味、忍耐、立ち直りを鮮やかに浮き彫る。忍耐や諦観等決して積極的な感情ではないものも、時として踏ん張り生きていく事には必要なのだと教えられた。さぁ、今日も粛々と。 2021/08/18
新田新一
40
著者が書き留めた無名の人々のさまざまな思いがまとめられた一冊。良い本です。読みながら何度か涙ぐんでいました。母親への愛憎半ばする思いを書いた「ずっと母を殺したかった」のように重たい話が多いです。重たいのですが、読まずにはいられません。一人一人の話が、他人事とは思えなかったからです。苦しいけれど、誰もが一生懸命生きていることが伝わってくるのも良いです。「葬祭の海」が一番心に残りました。海に散骨する話で、不思議な明るさがあります。死後、自然に帰るのは悪くないと思いました。2025/10/12
団塊シニア
29
ごく普通の人の人生に光をあて渾身の取材と巧みな文章力、登場人物をひとり、ひとり丁寧に描写する作品は今回も期待を裏切らなかった、「生きる理由が見当たらない」「八年目のファックス」「葬送の海」は心に残った。2021/05/21
Our Homeisland
27
良かったです!ぜひ皆さんにも読んで欲しいお勧めです。実は私は著者の上原さんとは知り合いです。上原さんは大変に穏やかで誠実な方です。単行本として出ていたものに、追加、編集、改題しての文庫化されたものです。「その時の彼の心中やいかばかりだったろうか」的な余計なことを一切言っていないところが素晴らしいです。インタビューされた人に起きた出来事ではなく、上原さんが構成して展開する独自の作品にそれぞれがなっているのです。コラムというこのエリアを創出したパイオニアという点が非常に偉大であると思います。2021/05/28
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